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おとな向けのネットミームを学習雑誌の付録にする意味

 もともとこの「きれいなジャイアン」は映画版などの作中で時折、急に漢気を見せるジャイアンのキャラクターとも相まって、ネットミーム的にさまざまなところで“イジられて”きていた。

 そのためファンからのカルト的な人気はあったものの、逆に言えばそれはあくまで大人にむけたモチーフだったということにもなる。自身の体験による裏付けがあったとはいえ、それを子ども向けの学習雑誌の付録にあえて採用した理由はどこにあったのだろうか?

©文藝春秋/平松市聖

磯辺 確かにこの付録を作りたいという話を版権元の藤子プロさんに相談した時にも、「これ、子どもは分かりますかねぇ?」と言われたんです。社内でも「これ、子ども向けにしてはニッチすぎない?」という指摘もありました。

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でも、実際にいろんな子どもに付録の試作を見せてみると、「きれいなジャイアン」の元ネタは知らなくても、ニコニコしながら何回も遊んでくれるんですよね。その姿を見ていると、読者となる子どもはクリアできるだろうと。大人はみんなネットでネタにしてるくらいだから好きなのはわかっていましたし、あとはそれを学習雑誌の付録でやる意味があるのかどうか。そう思った時に、貯金箱にすれば年末の家族団らんのきっかけのひとつになるのかなと考えました。

――家族団らんのきっかけ……というと?

磯辺 例えばこの付録を子どもが作って、ドヤ顔でみんなに見せれば元ネタを知っている大人は笑ってくれるだろうし、知らない大人は誰かに説明してもらいますよね。そんな風にコミュニケーションが生まれれば、親戚皆で楽しめるんじゃないかなと。そういう体験まで想像できたので「きれいなジャイアン」そのものの存在を知っていてもいなくても、絶対楽しいだろうと思えたので、実際に企画にしました。

同誌にはさまざまな付録の歴史がある ©文藝春秋/平松市聖

100年近く続く雑誌の歴史から学ぶこと

――過去の付録も参考にされたんですか?

磯辺 そうですね。基本的に『小学一年生』のような学習雑誌は、子どもたちのイベントに寄り添って作っています。年末年始の発売号は、お年玉シーズンで初めて自分のお金をもらう時期なので、そこに合わせて「自分でお金を管理してみよう」ということで貯金箱を付けることが多いんです。なので、ハード面は歴史を踏襲して、鉄板の貯金箱にしました。

 やっぱり100年近く雑誌が続いてきている中で、お爺ちゃんやお婆ちゃんだったり、お父さんお母さんだったりの幼少期の楽しかった記憶も学年誌の中に詰まっていると思います。だからこそ「こういうのあったなぁ」というのを思い出しながら子どもと一緒に楽しめるのは、尊いことなのかなと思います。