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「年老いた母とはシェアハウス、社会人になった娘は巣立っていって…」麻木久仁子(60)が始めた“おひとりさまの楽しい老い支度”《自分のために、ちょうどよく》

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『おひとりさま薬膳 還暦からのごきげん食卓スタイル』より #1

2023/01/04
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「老化についてはまだポジティブになれません」

 安全を守るため歳相応に行動を変えることは大事ですが、一方で、できないことが増えてきたときに「どうせ歳だから」と、ネガティブな方向に心のバランスをとるのは、ちょっと違うと感じています。

 若い気持ちでいることは大切。もちろん20歳も若いつもりでいるのは危険ですが、体の安全を守れる範囲で、心は実年齢マイナス5~8歳くらいがちょうどよいのではないかと、勝手に導き出しました。

 正直なところ私もまだ、老化についてはけっしてポジティブにはなれません。けれど、ネガティブでいるのもつまらない。ポジティブすぎたら体に危険が生じる。結果「どうせ」とは口にせず「まだまだ」と思いながら、少しだけ若いつもりで生きるのが、メンタル的にもいいように感じる今日このごろです。

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©光文社

「まだまだ」と思うとき、少しだけ食事で無理をすることがあります。 消化に悪いとわかっていても、胃腸が火を噴くとわかっていても「ジャンクフードが食べたい!」「辛いものが食べたい!」というときは、私は食べる楽しみを優先します。生きて楽しまなければ、本末転倒ですからね。

 ただ、刺激に対して処理できる力は弱まっていますから、食べるためにはどうするか、ワンセットで考える必要があります。

 小さなポーションで心を満たす、という考えもあるでしょうし、せっかくだからより味わう、という考えもあるでしょう。私はもともとカップ麺が好きで、無性に食べたくなったときは後者。「たまの楽しみなんだから、汁までおいしく食うぞ!」そう思ってフレッシュハーブや調味料を加え、とことん満喫します。

 体のために食べるか、楽しみのために食べるか。
 これも重要なバランスのひとつです。

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 心身の変化と向き合っているさなか、生活スタイルにも変化が訪れました。まず、私と同時期に大病をしたのを機に、一緒に暮らすようになった母。以来、食事は私が用意していましたが、少し前に「自分が食べたいものを食べるから、もう作ってくれなくても大丈夫よ」と言われ、毎食をともにすることはなくなりました。

 シェアハウス状態とでもいいましょうか、たまにおすそ分けをしたり、されたり。週末は一緒に食べたりもしますが、自分の生活は可能な限り自分でコントロールしたいという“おひとりさま”らしく、その大先輩である母らしい態度だなあ、と思っています。

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