豊富な知識と明るいキャラクターでクイズ番組などを中心に活躍を続けるタレントの麻木久仁子さん(60)。2010年には脳梗塞、2012年には乳がんを患った中、「薬膳」との出会いが、大病や更年期を乗り切る一助になったと言います。以来、薬膳の魅力にすっかりハマった麻木さんは、2016年に国際薬膳師の資格も取得しています。

 ここでは、麻木さんの著書『おひとりさま薬膳 還暦からのごきげん食卓スタイル』(光文社)から一部を抜粋。薬膳の力を借りる生活から見えてきた、彼女流の“老後”への向き合い方とは。

※完全版は『おひとりさま薬膳』をご覧ください。

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麻木久仁子さん ©光文社

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人間関係にも“棚卸し”が必要

 最近よく思うのは、昔と同じように過ごしていては、肉体の安全は守れないということ。心の余裕のなさが身の危険につながる実感があるから、とにかくあわてずにいられる生活を心がけています。

 今や、電車に飛び乗るだなんてありえない。ハイヒールどころかピンヒールで階段を1段飛ばししていたあのころ……あれはなんだったのでしょう?(笑) ヒールの靴はすべて処分し、ペタンコ靴をはいたうえで手すりにつかまることは、還暦の自分をいたわることにほかなりません。

 また、腹を立てるようなことがあれば、カッカして体を壊しそうな気がして、無駄な闘いからは降りるようになりました。

 若いころはちょっと合わないと感じる人とのつき合いも、その経験がやがて自分の力や知恵になると思い、そして実際になってはきたけれど、この歳(とし)になればもうじゅうぶんに経験してきたではないか。そのストレスで「後天の精(編集部注:生きるなかで食事や運動など養生の力によって得た寿命のこと)」の残高を減らすくらいなら、さっと距離をおきます。

 還暦は再スタート。人間関係も棚卸しが必要なときかもしれませんね。数はおのずと減っていき、私なんて驚くほど少ないですが(笑)、自分にとって無理なく心地よい関係があらためて見えてきます。