2016年に国際薬膳師の資格を取得したタレントの麻木久仁子さん(60)。10月に発売した著書『おひとりさま薬膳 還暦からのごきげん食卓スタイル』(光文社)では、“おひとりさま”の老後を楽しく迎えるためのレシピや考え方を披露しています。

 ここでは、本書から一部を抜粋。脳梗塞と乳がんという2つの大病を立て続けに患い、さらには更年期にも悩まされた麻木さんが前向きな心を取り戻せた背景には、大人になってから身につけた“自己肯定力”の存在がありました。

※転載にあたり、一部を編集しています。完全版は『おひとりさま薬膳』をご覧ください。

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麻木久仁子さん ©光文社

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父はけっして私をほめなかった

 自己肯定力とは文字どおり「自分を肯定する力」。他人と比べることなく、あるがままの自分を――たとえそれがどんなにダメな自分であっても――これでいいのだと受け入れ、尊重できる力のことをいいます。

 自己肯定力があれば、人生に起こるさまざまな出来事にジタバタともがきながらも、最終的にはポジティブにとらえることができますから。今よりもできないことが増えていき、まわりからは親しい友人や家族が減っていく老後はさらに、この力を持っているか否かが重要なカギになってくるのでしょう。

 かくいう私は幼いころから、自己肯定力のとても低い人間でした。いつも元気で前向きに見られることが多かったのですが、それは自信のなさの裏返し。大病をきっかけに薬膳と出会って少しずつ意識が変わっていき、それでも「他人の評価がまったく気にならないぞ」と思えたのは、50代も半ばを過ぎてから。本当につい最近のことでした。

 私の父は、けっして私のことをほめない人でした。

 よそさまにほめていただいたときも「いやいや、この子はぜんぜんかわいくなんかないですよ」と、身内としての謙遜もあったのかもしれませんが、真顔で否定する父に何度も傷ついてきました。認めてほしくてがんばった勉強でも「おまえより、もっといい点の子がいるんだろう?」と相手にされず、一事が万事、そんな調子だったのです。