2022年4月、国は子宮頸がんを予防する「HPVワクチン」定期接種の積極的な呼び掛けを、9年ぶりに再開した。一時は接種率がほぼ0%にまで激減した、ワクチンの“今”を取材した。
毎年3000人が命を落とす子宮頸がん
助産師 森重朝子さん:
子宮頸がんって知ってるかな?子宮の首みたいなところ、ここを子宮頚部といいます。ここにできるがんを、子宮頸がんといいます
大阪府豊中市の小学校で5年生に向けて行われた「性教育」の特別授業。この日、助産師の森重朝子さんが特に伝えたかったのは、子宮頸がんとワクチンの話だった。
主に性交渉で感染するHPV=ヒトパピローマウイルスが原因で毎年1万人が子宮頸がんにかかり、およそ3000人が命を落としている。
助産師 森重朝子さん:
性交で8割の女性が感染するけど、多くは体の免疫で自然に治る、ほとんどの人はね。でも、感染が続いた人にがんが発生する。感染したからといっていきなりがんになるわけじゃない、数年から十数年かけてがんになっていく。じゃあどうしたらいいか。HPVワクチンを打ってくださいと
5年生:
ちょっとだけ聞いたことあったけど、交通事故より死亡者数が多かったのは知らなかった、子宮頸がんのことは知っていたけど、ワクチンがあるということは知りませんでした
子宮頸がんワクチンについて、国や自治体は2010年以降、小学6年~高校1年の女性を対象に「積極的な接種」を呼び掛けていた。
しかし、接種した後に体の痛みなどさまざまな症状が報告されたことを受けて、2013年6月~2022年3月のおよそ9年間は積極的な呼び掛けを行わず、接種する人は激減。ワクチン接種が滞ったことで、深刻な事実が明らかになってきた。
新潟大学 特任教授 榎本隆之医師:
子宮がん検診に来られた方を調べて細胞診(細胞を採取しての検査)異常の発生率を見ますと、ワクチンを打っている世代と打ってない世代では、明らかに細胞診異常の率が上がっていますね