アメリカやイギリス、イスラエルなどの世界各国では、新型コロナウイルス感染症に対して、ワクチン接種がはじまっている。

 日本でも、2月12日に厚生労働省の専門部会が承認を了承し、本日、ファイザー/バイオンテックのワクチンが厚生労働大臣により正式承認された。早ければ今週半ばから、医療従事者・高齢者など順次接種が進むと考えられている。

 最近、週刊誌などの「ワクチン忌避報道」が医師たちなどによる抗議により、撤回されることが相次いだ。医師たちは、なぜ、「ワクチン忌避報道」をこれほど恐れているのか、その根拠を、医師でもあるわたしが、専門家にたずねてみた。

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ワクチンをめぐって誤情報が拡散 

「医師も、正しい情報を提供する努力をしてきています。その努力が水の泡になってしまうので、ほんとうにたまらないという気持ちです。大手マスコミが、一般の方に正確な情報を与えずに、不安感をあおるのはよくないと思っています」

 こう語るのは、2020年ハーバード大学公衆衛生大学院を卒業し、ワクチンの疫学に詳しく、子宮頸がんワクチンに関する啓発活動も行っている木下喬弘医師だ。なぜ、ワクチン忌避報道が繰り返し起こるのか。

「メディアによる専門家の選定や、メディアの報道姿勢に問題があるのではないでしょうか。ワクチンがどれだけ有効で安全性が調べられているか、データをよく知らない人が解説をしていることが多いのです。その結果、今回も、『ワクチンには感染そのものを予防する効果はない』『mRNAが核の中に入る』などの誤情報が報道されてしまいました」と、木下医師は言う。

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 たしかに、テレビ番組などでは、正確には、その分野の専門家といえない人に、専門家としてコメントを求めたりすることが少なくない。

 たとえば、テレビのワイドショーでは、医療系の国家資格を持たず、現役のウイルス研究者でもない人が「専門家」としてコメントを求められ、国内で新型コロナウイルスが流行し始めた頃、「アビガンをできるだけ早く投与すべき」「全員にPCR検査を」と、世論を煽っていた現実がある。

日本は「ワクチンは有効」と考える人が最も少ない国

 なぜ、日本ではワクチン忌避的な感情が少なからず根付いているのだろうか。

「これまで、サリドマイド、スモン、薬害エイズなど、実際に健康被害のあった製薬があった歴史があり、新薬に懐疑的な土壌がある上に、MMRワクチンでは、無菌性髄膜炎が発生して定期接種が中止された経緯があります。また、子宮頸がんワクチンでも、副反応報道が大々的になされ、今でも非常に低い接種率にとどまっています。(注1)。

 海外では、日本ではマスコミ報道がワクチン忌避に影響しているのではないかと言われることが多いです。2020年9月に出されたLancetの論文では、日本は『ワクチンは有効である』『ワクチンは安全である』と考える人がもっとも少ない国であることが報告されています(注2)」