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ワクチンを接種するかどうかは、社会の問題でもある

「新型コロナウイルスワクチンを接種するかどうかは、個人の問題にとどまらないと思っています。本人がかかるかどうかということの他、家族が罹ったり、周囲の基礎疾患を持っている人や高齢者に感染させてしまったりする問題もあります。ですので、個人の話と社会の話は切り離せません。

 今ある社会課題、つまり、みんなが我慢して、外に出られない状態を解決するのに非常に有効なワクチンが開発されていて、自分が接種するかどうかで自身が感染する確率は変わります。そうすると家族や祖父母など、周囲の人が感染する確率も明らかにかわってくるわけです。

 そういった観点からも、ワクチンを打つのは非常に重要であり、いい選択だと考えています 」

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 奥医師は、薬にしてもワクチンにしても、どんなものでも、後から新たな作用がわかったり、新たな副反応が出たりする確率はゼロではないと話す(注6)。しかし、今は、情報を見極めて適切に判断する必要があるという。 

「医師もメディアも、正確な情報を提供することをむねとするべきで、個々人の置かれた状況を考慮しつつ、打つか打たないかを決めていただくのがいいと思います」 

 先にインタビューした木下医師もこう語る。

「わたしも、一般の方に、ワクチンを必ず打つべきだと言っているわけではありません。リスクの認知は人によって異なり、ワクチンのリスクは許容できないけれども、自然に感染するのは運命だから許容できる、という人もいて、これは価値観の問題で、どちらのリスクを受け入れたいかは人によって異なります。

 理解していただいた上で、もう少し様子を見たいと思われるのであれば、それはそれで尊重したいと思っています。

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 ただ、今回のワクチンはアナフィラキシーの頻度が20-40万人に1人で、病院で医療を受けて全員回復しているわけです。一方で、これだけ感染対策を頑張っても日本では既に2万人に1人、アメリカでは1000人に1人以上の方がコロナで亡くなっています。

 こういったことを伝えずに、ワクチンの恐怖だけをあおるのは問題です。あくまで、有効性、安全性を理解した上で、打つか打たないかを決めていただく必要があると思います 」

注1……WHO/UNICEF Human papillomavirus (HPV) vaccine coverage estimates in excelによると、2013年に定期接種が開始され、3ヶ月で副反応報道があった子宮頸がんワクチンの接種率は2014年以降1%未満で推移し、2017年は0.6%であり、2018年、2019年も同程度と推測された。 

注2……de Figueiredo A et al. Lancet. 2020 ;396(10255):898-908.

注3……CDC. COVID-19 vaccine safety update, Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP) January 27, 2021 

注4……J Adv Pharm Technol Res. 2010;1:11–17. 

注5……日臨麻会誌.2012;32:479-87 

注6……なお、mRNAは、理論的には、1週間ほどで体外に排出されるので、長く体内にとどまり続けることはないとされ、長期的影響や遺伝的影響の懸念は少なくとも理論的にはないと考えられている。

※14日午後に新型コロナワクチンが正式承認との報道を受け、タイトルとリード文を一部アップデートしました(2021/2/14 18:47)。