大ヒットになった『トップガン マーヴェリック』。『週刊文春CINEMA!』の大アンケートによる今年の映画ランキングでも見事1位を獲得した同作品の素晴らしさは、コロナ禍で離れていた観客を映画館に呼び戻したことだけでなく、内容がトム・クルーズという俳優の映画人生とシンクロしていたことだろう。

 そんなトム・クルーズと日本で一番近く、そして一番長く接してきたのが、通訳として長年活躍した戸田奈津子氏だ。彼女の目から見た「スーパースター」の実像とは――。『週刊文春CINEMA!』より一部を抜粋して転載する。

大ヒットになった『トップガン マーヴェリック』 ©Paramount Pictures/Entertainment Pictures/ZUMAPRESS.com/共同通信イメージズ

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――今年はトム・クルーズの『トップガン マーヴェリック』が、とても話題になった年でしたね。トムは来日が多いイメージですが、日本びいきなんでしょうか?

戸田 決して日本だけがひいきではなくて、全部の世界の国に対してそうなんです。

 もちろん日本は大好きですよ。みんな優しいし親切だし、好きなのはわかっていますけど。彼はいま撮っている映画、これから公開する映画が自分の関心のすべてで、そこに集中するから、プロモーションも頑張るわけです。ものすごく勉強する人だから、『ラスト サムライ』だったら侍のことを全部勉強する。

 昔の日本や武士道に関係ある資料は全部読むし、剣道も刀もちゃんと練習する。そうやってかかりきりになるけど、終わったらそれまでなんです。全部捨てちゃう。

2003年の『ラスト サムライ』では当時としてはかなり多くの日本人キャストが出演 ©Ronald Grant Archive/Mary Evans/共同通信イメージズ

――ええっ、そんなにすっぱりと。

戸田 あんなに映画をたくさん撮っていたら、いちいち引きずっちゃ駄目なんでしょう。でも、そのおかげで、日本を扱った作品の中では抜群にまともでしょう。他は国辱物みたいな、変な日本描写の映画ばっかりじゃないですか。でも『ラスト サムライ』はちゃんとリスペクトを感じます。それはちゃんと彼が勉強したからですよね。もちろん『トップガン マーヴェリック』の間は、飛行機のことばかり考えてる。