内田 母も「意味なんて、ずっと唱えているうちに時々ポロッとわかればいいの。最初からわかったらつまらないのよ」なんて言ってました。
「南無妙法蓮華経」を勝手に解釈
伊藤 お母様は也哉子さんにもお経を唱えるようにとは勧めなかったんですか。
内田 「読んだらおもしろいよ」くらいは。ただ、私が行き詰まっているときなどに「南無妙法蓮華経って言ってみたら呼吸も整うよ」って言うことはありました。いわば、おまじないですね。
伊藤 「南無妙法蓮華経」は法華経のお題目で、「南無」はお任せしますという呼びかけ「妙」は「素晴らしい」、つまり「素晴らしい法華経にお任せしますー」って言ってるんですよ。
内田 そうなんですか。母の勝手な解釈だと思いますけど、母は「この宇宙の法則に則って私は生きていきたいということだ」と言っていました。
伊藤 ああ、すごくいい解釈です、それは。
「薬草喩品」から得た母のアドバイス
内田 母は日常にお経を取り入れていたんですね。私の両親は最後まで離婚はしなかったものの私が生まれたときには既に別居していて、うちは事実上シングルマザーだったんです。
母は私を1歳半でインターナショナルスクールに入れたので、私は英語は身につけることができたものの日本語がちょっと怪しかった。そこでインターナショナルスクールが6月で終了すると、7月から半年間、地元の区立小学校に転入しました。
その小学校の校長先生が退職されるので、全校生徒が手紙を送ることになったのですが、何を書いたらいいのかわからない。困り果てた私に母がくれたヒントが「雨はどんな木にも等しく降り注ぎ、木々はそれぞれの花を咲かせたり実を実らせたりする。校長先生もいろいろな子どもに教育を注いで、子どもたちがそれぞれの伸び方をしたんでしょうね」というものだったんです。
伊藤 素晴らしいアドバイス!
内田 よくわかんないけどそのまま書いたら、校長先生がいたく感動して卒業式で読み上げたんですよ。そんな思い出があるものだから、伊藤さんの本に書かれている法華経の「薬草喩品(やくそうゆほん)」の訳を読んでびっくりしたんです。ああ、母のアドバイスの出典はこれだったんだと。