第二次世界大戦で没した画学生の遺作を展示する、長野県の戦没画学生慰霊美術館「無言館」。その館長の窪島誠一郎さんを描いたテレビドラマが、主演・浅野忠信さん、監督兼脚本・劇団ひとりさんで、8月27日に24時間テレビ(日テレ系)内で放映されます。窪島さんと内田也哉子さんとの対談を「週刊文春WOMAN2022年夏号」より全文公開します。(全2回の1回目。後編を読む)

◆◆◆

志半ばで死んだ、無名の“画家未満”の作品を集めた美術館

内田 戦争について今一度見つめ直したいと思い、久しぶりに無言館をお訪ねしました。初めて来たとき、まるでスイスの山奥に数百年もたたずむ小さな教会のようだなあと思ったのですが、そのたたずまいも、静謐で温かな空気も少しも変わっていません。

ADVERTISEMENT

 木の扉を開けると、第二次世界大戦で亡くなった画学生たちの遺した絵画や彫像、遺品となった絵の道具、戦地からのハガキなどが展示されている。正式な名称は戦没画学生慰霊美術館「無言館」。創設者であり館長である窪島さんが名付けたのですね。

絵:Gento

窪島 ここにある絵は無言だが見る人に多くを語りかける。訪れた人は絵を前に誰もが無言になる。──というのは後から考えた理屈で、実はふと思いついたに過ぎないんです。でも、我ながらよくぞいい名前を思いついたものと、自惚れているんですけどね。

内田 窪島さんが私財を投じて1997年に建設。その前に信濃デッサン館という美術館も建てています。

窪島 自分で集めた絵が溢れ出したので、それらを収めるために建てたのです。

内田 比較的マイナーな画家の絵ばかり集めていたそうですが、それはなぜですか。