問題を抱えているのは外資系プラットホームやSNS
でも、これらLINE事件での根本的な対処が可能だったのは、LINEも旧ライブドア以降ちゃんと日本で雇用をして、日本で事業をやっているからこそであって、資本が韓国系であっても日本に根を張ってビジネスをしているわけですから、日本の法令や政策に対してコミットして当然だとも言えます。
他方、ネット上でのディスインフォメーションで問題となるのは、FacebookやYouTube、Twitter、Instagram、TikTokなどのSNSで流される大量のガセネタとそれに対するバズりです。以前なら、ルールだけ各社で決めて、その辺の監視は全部コンサル会社などに丸投げして、彼らがかき集めてきた皆さんが精神を崩壊させながら暴力表現や薬物などの違法取引、動物虐待画像、児童ポルノなどの有害情報をチェックして垢BANさせる仕事に従事していました。日々ご苦労なことです。
しかし、FacebookがEUやアメリカ当局との戦いに負けて個人情報を利用したターゲティング広告などを主力とした新たな成長ができなくなり、社名までMetaに変えてメタバースに進出したものの馬鹿にされる出来でしかなかったことを考えれば、こういう業界の繁栄も永続するわけでないのだという沙羅双樹の花の色、侘び寂びの世界に足を踏み入れることになります。
つまりは、日本政府が日本人のために日本社会に善たるネット環境を作り上げ、それが実は安全保障の大事な一角だよと政治家も官僚も技術者も企業家も概ね同意であったとしても、実際にそれらの問題を抱えているのは外資系のGoogleやTwitterなんだよという話になります。
むしろ、これらのプラットフォーム事業者が提供しているサービス抜きにはネットが成立しないぐらいの勢いで日本でも浸透していますし、議員さんも官僚の皆さんも秘書さんも、連絡に「LINEは駄目だ」という連絡がGoogleの手がけるGmailで送られてくるという喜劇もあります。どうなっとるねん。もちろん彼らにも利害はありますので、単なる善良なる企業体として日本のネット政策や安全保障に協力してよというだけでは駄目で、根拠となる法律と、積み重ねた議論を経ての協力関係は必要でしょう。
日本は憲法において日本政府の暴走を防ぐために日本人の諸権利を規定しているのですが、我が国の憲法第21条の通信の秘密は、公権力による積極的知得行為の禁止と、通信業務従事者による漏洩行為の禁止を定めています。この場合、EUなどと並んで日本でもどうにか競争法を駆使してGoogleやTwitterなど問題百出の事業者に対して適切な対処を政策的に求めていくしかないんじゃないかとも思います。少なくとも、それらの情報がなぜ上位表示されているのか、BANされたアカウントがなぜそう判断されたのかなどの運営における透明性について、国民に対して公平に示さなければならない義務はプラットフォーム事業者には課せられていくでしょう。