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「パンチが強くて足も速い。ただ、それよりも…」恩師が明かす、井上尚弥が中1で出していた“怪物のオーラ”

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八重樫が振り返る井上

 その八重樫は昨年11月から井上のフィジカルトレーナーを務めている。“先輩王者”が当時を振り返る。

「一方的にやられるわけではないですよ。緊張感持ってケガなくやれた。もちろん尚弥は強かったですよ」

八重樫氏

 相手が誰でも勝てるという自信も持っていた。14年のWBO世界スーパーフライ級王者オマール・ナルバエス戦のことだ。

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「2階級上だし、体も出来ていなかったので1回断った。でも本人が『ぜひやらせてください』と。その言葉通り、倒してくれました」(大橋会長)

「なんだこの試合は!」父と試合中にケンカ

 ただ井上も順風満帆なボクシング人生だったわけではない。悩まされてきたのが腰の怪我だ。2016年9月のWBO世界スーパーフライ級王座の防衛戦。この時彼は、セコンドが支えないと立ち上がれないくらいに症状が悪化していた。

「怪我がもう治っていると思っていた真吾さんが、あまりのふがいない試合ぶりに『なんだこの試合は!』って本人に怒っちゃってね。それで試合中にケンカみたいになってしまって。そこで真吾さんが『トレーナーを辞めさせて頂きます』って言い出してしまったほどでした」(同前)

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 それでも防衛に成功した井上。以降も怪我と戦いながらも、トレーナーの父と、勝利を積み重ねてきた。その父子はいま「最高の関係」にあるという。

「尚弥も結婚して父になって、『お父さんの気持ちが分かるようになった』と言っています。精神力も付いた。試合直前には選手は人を近づけさせないもの。でも尚弥は自分の子供に『会長に挨拶しなよ』なんて言いながら、子供と普通に接しているんですから」(同前)

3児の父でもある

 井上も来年、30歳を迎える。37歳まで現役生活を貫いた八重樫が語る。

「尚弥は『35歳までやりたい』と言っていますが、細胞の老化は誰にでも訪れる。加齢に抗いながら、パフォーマンスを上げるトレーニングをやっていきたい」

 “怪物伝説”は、まだまだ続く。