6月7日、さいたまスーパーアリーナで行われたボクシング世界バンタム級3団体統一戦。2年7カ月ぶりにノニト・ドネアと対戦したWBAスーパー＆IBF世界バンタム級王者の井上尚弥が2回TKO勝ちし、日本人初の王座統一に成功した。
1ラウンド終了間際に右のクロスカウンターでダウンを取り、早々にドネアを圧倒した井上。強さの秘密は一体何なのか。「週刊文春」の連載「阿川佐和子のこの人に会いたい」で語った記事を公開する。（初出：週刊文春 2018年8月15・22日号 年齢・肩書き等は公開時のまま）
〈全2回の1回目。後編・〈再戦で圧勝〉井上尚弥が語っていた「ドネアとは会えばすごく仲いい」「対戦相手を憎たらしいと思ったことはない」を読む〉
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試合当日は5キロ戻して挑む
阿川 はじめまして。5月18日にグラスゴーで行われた、（エマヌエル・）ロドリゲス戦は第2ラウンドでの鮮烈なTKO勝ちで、私も映像で観て大興奮でした！
井上 ありがとうございます。
阿川 この試合はワールドボクシング・スーパーシリーズ（以下、WBSS）という、その階級で一番強い人を決めるトーナメントの準決勝だったとか？
井上 はい。ボクシングは、主な認定団体が4つあって、詳しくない人にとっては誰が強いのか分かりにくい。それで各団体の王者やランキング上位の選手でトーナメントをやろうというのがWBSSです。現在、自分が戦っているバンタム級に加え、スーパーライト、クルーザー級でトーナメントが行われています。
阿川 にわか知識でナンですが、WBAの王者だった井上選手がIBFの王者だったロドリゲス選手を倒して、2団体のチャンピオンになられたことになるんですよね。次の決勝戦はいつ開催されるんですか？
井上 具体的には決まってないんですが、秋の予定です。
阿川 まずロドリゲス戦を振りかえっていただくと、井上選手にとって2度目の海外での試合で、今回は奥様と息子さんも観戦にいらしてたそうで。
井上 まだ1歳なので、飛行機での移動なんかも大変だったみたいです。
阿川 1歳！? 試合中は泣くこともなく？
井上 試合が始まる直前まで寝てたらしく、慌てて起こしたそうです。だから、テレビの画面に映ったときは寝起きのボ～ッとした顔で（笑）。
阿川 ハハハ。井上選手ご自身は、試合の何日前からグラスゴー入りしてらしたんですか？
井上 10日前から現地入りして調整してました。グラスゴー入りするときには減量のリミットまで1.5キロくらいにしていて計画通りだったので、コンディションも非常に良かったです。
阿川 そもそも、バンタム級というのは何キロですか？
井上 53.5キロです。普段、自分は61キロくらいあって、試合の約1カ月前から落とし始めるんですね。グラスゴーでは、会長（大橋秀行氏）や父（トレーナーの真吾氏）やスタッフ、弟（WBC世界バンタム級暫定王者の拓真氏）や従兄弟（日本スーパーライト級王者の井上浩樹氏）とコンドミニアムに泊まっていたんですが、朝起きたときに自分でうどんを2、300グラムくらい茹でて食べてました。口に入れるのはそれくらいで。
阿川 うう、キツそう……。実際の計量は試合よりどれくらい前に……？
井上 試合前日です。僕の場合、試合当日は5キロくらい戻して挑むんですけれど……。
