しかしX氏は自らが受けた仕打ちについては「屈辱的」と憤りながらも、刑務官が受刑者に暴行を加えることについては「わかるような気がする」と意外な反応を示す。
「1日中壁に向かってしゃべっているやつとか、すぐに叫んで暴れるやつもいるわけで、中を見てきた俺にすれば、手が出る気持ちはわかりますよ。オヤジたちは受刑者を制圧するのが仕事なわけで、中指を立てたり土下座させるくらいはあるだろうなぁというのが正直なところ。刑務所に入ったことがない人はわかんないだろうけど、あそこは特殊な場所だからね。それに刑務官って仕事は想像以上にしんどいんですよ。給料も安いしね(笑)」
受刑者にすら哀れまれる刑務官の業務実態とは、どのようなものなのだろうか。
「刑務官の世界もヤクザと一緒で完全に縦社会でね、制服に入ってる線の数で階級がわかるようになってる。銀の線が1本だとペーペー、2本で中堅、3本だと現場の中では偉い方。で、その上に線が金色の“金線”と呼ばれる若いキャリアがいる。毎朝その“金線”が刑務作業の工場を巡回する時は、いつもは偉そうにしてるオヤジたちが“金線”の顔色を窺ってビクビクしてるのがわかる。いいところを見せようとして、やけに受刑者を厳しく怒鳴りつけたりしてね」(X氏)
「日本のエリートってこんなもんかって思っちゃいましたよ」
刑務官にとって、受刑者をいかにコントロール下に置くかが“評価”のポイントになっていて、高圧的な態度を取ることにつながるようだ。その価値観はキャリアたちも同じだという。
「“金線”のキャリアには東大卒とかもいるはずなのに、あいつらも現場の刑務官に負けないぐらい口が悪い。日本のエリートってこんなもんかって思っちゃいましたよ」(X氏)
そして当然、受刑者たちも決して従順なばかりではない。
「一方の俺たちは娯楽なんてないしヤクザも多いから、服従しているフリはしていても基本的にはオヤジたちを馬鹿にしている。で、馬鹿にされてるオヤジは、だいたい変なあだ名を付けられる。つんつるてんのズボンをはいてれば“ファッションしまむら”、鼻が長くてポットみたいなやつは“象印”とかね(笑)」(X氏)