愛知県の名古屋刑務所で、20~30代の刑務官総勢22人が、男性受刑者3人に対して手やスリッパで叩くなどの暴行を繰り返していたことが発覚し問題になっている。

 名古屋刑務所では2001年に刑務官が受刑者の肛門に消防用高圧ホースで放水して死亡させる悲惨な事件が起き、2002年にも革手錠のついたベルトで腹部を締め付けられた受刑者が死亡している。そんないわくつきの名古屋刑務所で再び発覚した暴行事件。

 犯罪者ですら「一番行きたくない刑務所」と恐れる“名刑”(名古屋刑務所の略)。しかし元受刑者から話を聞くと、その実態は想像を超えるものだった――。

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“名刑”と恐れられる名古屋刑務所 ©時事通信社

 府中刑務所(東京)、大阪刑務所と並ぶ日本最大規模の名刑は収容定員が約2500人に達する。重犯罪を犯した受刑者が集められ、内訳は暴力団員なども含む日本人の再犯者が約2000人、外国人が約500人という構成だという。

「受刑者が暴行を受けたのも、おそらく他の人の目が届かない保護房でしょう」

 数年前まで約6年間服役していた関西在住のX氏(50代)は、名刑の特殊さをこう語る。

「あそこは刑務所というより、刑務官による刑務官のための王国なんですよ。俺ら受刑者は王国の奴隷みたいなもので、生きていくには自分の子供みたいな年齢のオヤジ(刑務官)の犬にならないとやっていけない。作業中に少しよそ見をすれば怒鳴られるし、言葉遣いも常に高圧的です。そんなオヤジが喜ぶように、時には他の受刑者のことを教えてあげたりもしましたよ。今思い出しても屈辱的で『ふざけんな』と気分が悪くなる。とは言っても、オヤジの多くは王国の一般兵でたいしていい生活をしているわけじゃないんですよ」

 受刑者の多くは6人部屋などの雑居房で過ごすことになるが、模範囚には独居房が与えられることもある。そして精神的な病を抱えるなどして工場での刑務作業ができない受刑者は“保護房”に隔離されるという。

写真はイメージです ©iStock.com

「2500人も受刑者がいるから、いいヤツもいれば悪いヤツもいる。ピンク(性犯罪)や志願兵(寒い時期などにあえて犯罪行為をして刑務所で過ごす受刑者)は、刑務所でも最底辺の扱いを受ける。一方でシャバでとんでもない強盗をしてた外国人のギャングが妙にピュアだったりして、刑務所のことを『修学旅行みたいで楽しい』なんてやつもいました。

 ただどんなに軽蔑されてる受刑者でも、人目があるところではそうそう殴られたりはしません。他の受刑者が黙っていませんから。今回の受刑者が暴行を受けたのも、おそらく他の人の目が届かない保護房でしょう」(X氏)