KARAのメンバーにとっても、同期の少女時代の復活は大きな意味を持ったようだ。12月に放送されたバラエティ番組では、ニコルが「少女時代や2PMのメンバーは同世代なので、(略)私たちも同じようにカムバックしたいという気持ちが生まれた」と話している。
KARAや少女時代のカムバックは、歴史を積み重ねたからこそたどり着いた「K-POPの新たな地平」と言えるだろう。それは、ベテランの「第2世代」が、若手の「第4世代」に向けて贈った「将来の可能性」とも言い換えられる。
プロダクション側もメンバーたちに歩み寄り、積極的にIPの運用に乗り出した。しかもそれは、けっして「妥協」ではなく、プロダクション側にも経済的利益のあるWin-Winの戦略だ。
こうした背景には、「K-POP7年の壁」と言われるものがある。2009年、過去の「奴隷契約」問題などを受けて公正取引委員会は標準契約書を示して専属契約期間を最長7年とした。結果、5~7年でグループの解散やメンバーの脱退が相次ぐようになった。KARAのニコルやジヨンが、2014年にDSPメディアと契約を解消したタイミングもデビューから6~7年経ったころだ。
プロダクション側の歩み寄りは、「妥協」ではなくこのハードルを超克するための経済的判断と捉えるほうが適切だ。つまり、KARAや少女時代のカムバックは、国の経済政策に沿ったなかでのIP運用の結果である。
グローバル市場が拓けたことで、事務所の姿勢に変化
ただ、その判断ができるのはそもそもK-POPがグローバル・マーケットを相手にしているからだ。他プロダクション所属のメンバーがいるので、プロダクション側の取り分は以前よりも減るが、マーケットは以前よりも格段に広がったために十分な売上を期待できる。
逆に自国のマーケットのみを想定すると、限られたパイからシェアを取り合うことが最優先となるので、そうした判断はされにくい。圧力と忖度も生じやすくなる。 日本の芸能界のように。
アーティスト-芸能プロダクション-政策(国)、この三者それぞれの変化と、それにともなう力学の変動によって、KARAや少女時代のカムバックは可能となった。この前進は、K-POPが確実にアップデートしていることの証左でもあるだろう。