「世の中の人たちは、テキヤを暴力団とは思っていないと思う。でも、当局はそういう目で見るから、段々と肩身が狭い思いをしないといけなくなっている」

 今、テキヤが直面する危機とは? テキヤ文化に詳しい社会学者の廣末登氏の新刊『テキヤの掟』(角川新書)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)

テキヤはなぜ不人気商売になってしまったのか? ©getty

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不人気商売ゆえの苦労

 2022年5月3日、筆者は東京の下町に足を運んだ。そこで、現役の東山氏(仮名)と会い、テキヤの今後について話を伺った。以下は東山氏の証言である。

「テキヤには、歴史上、増えた時代があります。ひとつは、大正の関東大震災のとき。失業者が増えたため、行政と警察が相談して、一般の人たちが露天商になることを奨励した。もともと露天商は、親方一人に若い者一人という程度だったのが、この政策によって若い衆が増えたのです。

 次は、戦後の混乱期。闇市が出た地区は、テキヤが大きくなった。闇市がない地方では、テキヤは増えなかった。幸い東京は闇市だらけでしたから、テキヤの人材には事欠かなかった。

 こうした流れが、現在のテキヤに至るわけですが、いまは、若い人がテキヤに入門することは無くなりました。コンビニに行っても分かると思いますが、いつも求人の紙が貼ってある。どこの業界も人が足りない。私が考えるに、これは、会社も店舗も増えすぎたからだと思うんです。コンビニは外国人技能実習生などを受け入れて何とか回せるかもしれませんが、テキヤは無理だと思う。とりわけ、まともに日本に来ている人は難しい。テキヤは個人事業主ですから、労災や保険という問題がある。だから、外国人は難しいんです。

 一方、日本人の若者はどうかというと、テキヤは彼らの憧れの職業ではない。現代の若者は拘束されるのが嫌だというようになった。若い子の職業トレンドも変化している。一昔前は美容師に憧れたのが、現在はユーチューバーに憧れる若者が多いじゃないですか。