楽天・三木谷浩史氏とのアポに3時間も遅れてやってきた世界的経営者とはいったい?
「週刊文春」で連載中の三木谷氏による人気コラムを単行本化した『未来力 「10年後の世界」を読み解く51の思考法』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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日本企業とアメリカ企業の圧倒的な差
1995年のある日のことだ。日本興業銀行をやめて起業しようとしていた僕は、アメリカのアトランタでとても印象的な光景を見た。
その日、CNNに勤める友人に会いに行くと、同社のオフィスにはインターネットによるニュース配信の部署に800人近い社員が配置されていたのだ。1995年と言えばまだインターネットの通信速度は極めて遅く、日本の新聞社の配信事業の部署にいるスタッフはせいぜい4、5人、という時代。あの頃、日本のマスコミにとってニュース配信事業などは、全く力を入れるような分野ではなかった。
ところが、「売り上げはどれくらい?」と、そのCNNの友人に聞くと、彼は「そんなものはまだゼロだよ」と当たり前のように言う。たとえ売り上げが全くなくても、アメリカでは「ニュース配信」というこれから確実に来るだろう「未来」に対して、CNNのような伝統的な大メディアが大きなリソースをすでに割いている……。
「既存のビジネスをどうやって守るか」を日本の大企業が考えている時、「やられる前にやる」とばかりに前進しようとする彼らの姿に、僕は凄味を感じたものだった。
世の中が変わっていこうとする時代、「俺が最初にやるんだ」と後ろを振り返らずに走る姿勢は、実にアメリカ的な精神であると思う。
もう一つアメリカらしさを感じるのは、常にプライベートセクターにいる個人や小さな組織というものがイノベーションをリードし、従来の「規制」の枠をはみ出すようにして国をリードしていくことだ。