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 一体何をしでかしたのかは知らないけれど、タクシー業界が強い韓国で、ライドシェアリングを広げようとする彼はさぞかし要注意人物とされていただろう。

 というのも、彼はウーバーの事業を広げていく時に、極めて挑発的な戦略をとったことがよく知られている。アメリカの各州にはライドシェアリングを規制する様々な法律があったが、彼は敢えてそれを無視して事業を展開したからだ。

 そして、規制する側との衝突が生じた時は「どちらが正しいか」「どちらが本質的か」という議論を巻き起こしながら、現状の法体系の変更を迫っていった。

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「俺が訴えられている刑をぜんぶ合わせたら、何百年も牢屋に入ってなくちゃいけなくなる」と、彼は冗談めかして言っていたものだ。

未来を作る人間は「社会との軋轢」を恐れない

 現状の社会の常識や法体系を無視して、新たな「既成概念」を無理やりにでも作っていく――もちろんそうした彼の手法には賛否両論があるわけだけれど、本人にしてみれば「車に乗っている人が、ほかの人を乗せたら効率的じゃないか」と単純に考えただけのことだったに違いない。そして、実際に人々から便利だと求められたウーバーは、今では社会で重要なインフラにまでなっている。

「オンラインで本を売ろう」と考えたジェフ・ベゾスだって、「3000個の電池をつないだら速い電気自動車ができる」と思ったイーロン・マスクだって同じだ。

 彼らの手法は必ずと言っていいほど現状の社会のあり方と激しく衝突し、様々な軋轢を生んできた。そんな時、それでも彼らはブレーキを踏もうとしない。そこに僕は「未来」を確信する人間の特徴を見る思いがする。