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団地住民への差別、生活保護への偏見も…当事者女性が語る“地方の貧困家庭”のリアル「『誰も味方じゃない』と思っていた」

ノンフィクションライター・ヒオカさんインタビュー #1

2023/02/04

genre : ライフ, 社会

note

――私の地元でも、子供の私にすら「あそこの家庭、生活保護家庭らしいよ」とか「お母さんも働いているのに生活保護を受けてる」といった情報が入ってきていました。

ヒオカ 「誰々さんのところ、自己破産したらしいよ」とか普通に言いますよね。とにかくバッシングがひどい。

 それにもし生活保護を申請したとしても、役所ではマニュアル対応しかしてくれないから「車を処分できないなら申請できません」と言われてしまう。田舎では車がないと生活ができなくなってしまうのに。本当は、事情があれば車を残すこともできるんですけど、親もそういう知識がないから「生活保護なんて絶対ダメ!」という恐怖感が強かったんだと思います。

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就活や教育にまつわるリテラシーの格差

――大きい言葉かもしれませんが、例えば東京都心や、大阪・名古屋を含む地方都市の「都会」って、地方出身者からするとまったく違う世界のように思えませんか。

ヒオカ 全然別の世界ですよね。子供の頃から条件が違いすぎる。教育ひとつとっても、都会とは得られる情報量が全く違う。私の場合、親戚に大学卒業者が1人もいなくて、周りの大人たちに知識がないので「大学って何しに行くところなの?」って感じで、大学に進学する人がそもそも超マイノリティなんですよね。いわゆる「ファーストジェネレーション」というやつです。

 

 一方で、都会の子供は親世代の多くが大学出身者だから、就活や教育にまつわるリテラシーも全然違います。みんな大学進学は絶対条件で、いい企業に就職するために、そこから逆算して進路を選んだり塾に通ったり対策をしている。

 こういった話をすると「今はネットがあるんだから情報格差なんかないでしょ」と言われるんですけど、田舎にはネット環境がない家も多い。私は高校生の頃に初めて携帯電話を持たせてもらいましたけど、それも送り迎えに必要な親との連絡手段が目的だったから、電話とメールの機能しかなかった。インターネットに触れるきっかけがなくて、とにかく情報が遮断されている感じでした。

一発勝負の大学受験で体調がボロボロに

――高校に進学して初めて「大学進学」という選択肢について知るということですね。

ヒオカ 私はもともと勉強が不得意ではなかったので、幸運なことに自分で勉強して、公立の進学校に入学できたんです。すると、高校では先生も友達も「大学に行くのが当たり前」という感じで。団地内では「行かないのが当たり前」だったのに。

 そういう環境の変化もあって、自然と「あ、私も大学に行くんだな」と思うようになりました。

――ご両親からは「高校を出たらすぐに働け」みたいなことは言われませんでしたか?

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