地方の貧困家庭で育った、ノンフィクションライターのヒオカさん(27)。幼い頃から父親の暴力にも晒される生活を送ってきた。2022年9月には彼女の壮絶な人生を綴った著書『死にそうだけど生きてます』(CCCメディアハウス)を上梓し、反響を呼んでいる。
ここでは、同書より一部を抜粋。中学時代にいじめをうけたヒオカさんが、“うるさいギャル”に出会って救われたエピソードを紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)
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“ハブられ”のはじまり
私の中学校は部活に入ることが必須だった。
「ねぇ、ヒオカはどの部活に入るの?」
そう聞かれても、これといった希望がなく、煮え切らない返事をした私は、その日の放課後にグループの子たちがすでに入部を決めていたソフトボール部の見学に連れて行かれた。
それから毎日、「部活決めた?」「ソフトにするよね?」と笑顔で顔をのぞき込まれるたびにたじろいだ。正直ソフトボールにはまったく興味がなかったのだ。
結局、私はソフトボール部には入らなかった。
ある日、休みの日に遊ぶ約束の話になった。みな学校の近くに住んでいるため、場所を合わせるのは簡単だった。しかし私は街に出るのに車で20分もかかる。自転車もバス代も、そして遊ぶためのお小遣いも、何も持っていなかった。私は遊びに参加できなかった。
それからまもなくして、一緒にいる時のみんなの表情、その場の空気になんとなく違和感を持つようになった。目線や声色、微細な動き1つひとつに、穏やかではない何かが流れはじめていた。
決定的だったのは登山合宿だった。休憩地点でクラスの子たちが集まった時、グループの子たちと隣合わせになった。1人が他の子たちの手の平にグミを5個ずつくらい配っていった。やや沈黙があってから、最後に私の手の平に、1つだけ置いた。「ありがとう」と小さくつぶやいて見上げたその子の顔は、明らかにこわばり、曇っていた。
誰一人私の顔を見ようとはしない。会話に入ってはいけない無言の圧力があった。