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 人の目に触れるのが苦痛だった。いくら不登校の生徒たちとはいえ、集団のなかに入るのが怖くて仕方がなかった。しかし、父の監視の目がある家にもいられない。

 そこで、小部屋のほうに通うことにした。人と関わることこそできなかったが、勉強机があり、自習の時間がある。教科書を開くのは久々だった。

ギャルの登場

 小部屋に通い勉強する日々が続いたある日、転機が訪れた。

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 急に扉が勢いよく開いたかと思ったら、声の大きなギャルがいきなり入ってきた。 

「なぁ、ここで何しとる? こっちきなよ 」

 有無を言わさぬ強気な態度で半ば強引に大部屋に引っ張り出されたのだ。そこからどうやって仲良くなったのか、よく覚えていない。

 初見は、“うるさいギャル”だった。声が大きくて、中学生なのにメイクが濃くて。でも、どこか嫌な感じがせず、私の警戒心をかき消すほどに、とにかく明るかった。  

 彼女は、私の心のバリアを突き破って、「こっちにおいでよ!」と、誘ってくれたのだ。 

写真はイメージです ©AFLO

私のなかにある硬い堅い壁を突き抜けた、真っ直ぐな言葉

 緊張して押し黙る私をよそに、「うち、EXILEが好きなんよ!? 知っとるー?」と、勝手に自己紹介をはじめる。唐突にふざけてみたり、質問攻めにしてきたり、気がつけば相手のペースに乗せられ、思わず顔もほころぶ。

 笑ったの、いつぶりだろう。

 その子は、こちらの反応なんか気にせず、真っ直ぐ伝えてくれた。 

「ヒオカは本当に可愛くて面白い!」

 その時まで、誰も私の存在を認めてくれないと思っていた。 

 学校では誰もが私をいない者にした。

 私の心をズタズタに切り裂いて、壊していった。

 私の存在を、正面から認めてくれる人なんて、誰1人としていなかった。

 だけど、噓みたいに明るいその子が放った真っ直ぐな言葉は、私のなかにある硬い堅い壁を突き抜けて届いた。

 それからは私も大部屋に入り、他の子たちとも関われるようになった。息を吹き返した私は、かつての明るさを取り戻していった。フリースクールに通っている事実は父の怒りを和らげ、母を安心させた。そして、私の家での居住権を取り戻してくれた。

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