転職活動中に正社員で受かったのは、低賃金のブラック企業ばかり
――一刻も早く逃げる選択をしたということですね。その後の転職活動はどのように進めたのでしょうか。
ヒオカ 退職したのは良いものの、体がボロボロですぐには働けない。でも生活しないといけないから転職活動はするんですけど、復職が本当に厳しくて。キャリアアドバイザーの人からも「3年以内に辞めてしまうと実務経験にならないから……」と言われてまともに取り合ってもらえませんでした。
国公立の大学を卒業しても、一度会社を辞めたらそれがリセットされる。日本の雇用システムは、一度コースアウトした人が正規ルートに戻りにくいようになっていると実感しました。私が転職活動中に正社員で受かったのは、どこも低賃金でブラック企業という噂があるところだけ。そもそも実現可能な選択肢が、非正規の仕事ばかりでした。
日本は公的支援制度が足りていない
――復職がしづらい構造ということもあってか、会社を辞めることを「人生をリタイアする」くらいに考えてしまって、追い詰められる人もいますよね。
ヒオカ 問題なのは、日本はずっとそんな雇用システムであるにも関わらず、公的支援が薄いところ。
今の日本は、生活保護以外に活用できる支援があまりないんですよね。でも生活保護だと、受給要件が厳しくて受けられない人もいる。車を手放さないといけなかったり、資産を全て処分しないといけない場合もある。
コロナ禍でも問題になった生活福祉資金貸付制度だと、結局は返済をしなければならない。ただの借金じゃん、という。
――生活保護以外の支援制度がもっと充実すれば、ということですか。
ヒオカ もちろん生活保護は条件に合えばだれでも受ける権利はあるので、もっと受けやすくなって欲しいですが、それ以外の制度ももっと必要だと思います。例えば休職している間に手当をもらうにも、派遣だともらえなかったり条件が厳しかったりする。とにかく、コースアウトしてしまった人がまた自力で生活できるように支援する制度が足りないなと感じています。
あとは、現状の支援制度では、トラウマケアについての視点が抜け落ちているように思います。例えば虐待やDV、ハラスメントなどの被害に遭った場合、まずは住宅環境が整わなければ心身は回復しないし、腰を据えて就職活動をすることも働くこともできません。
――ホームレス支援においての「ハウジングファースト」(住まいを失った人々が、安心して暮らせる住まいを確保することを最優先とする支援や考え方)の理念と同じですね。
ヒオカ 安心して眠れる場所がないと、それこそ憲法で保障されている「健康で文化的な最低限度の生活」を送ることもできませんから。