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 好きなことって何?

 得意なことって何?

 私にはそれがわからなかった。

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 勉強はそれなりに好きで得意だけれど、進学校にいれば上には上がいることに容易く気づく。周りの友達はバンド活動をしたり、ダンスに明け暮れたり、陸上でインターハイを目指したりしていた。人生を懸けるとまではいかなくても、好きかも、と思えるものに出会い、真っ直ぐそれに打ち込める。その姿が眩しくて、遠い存在のように思えた。 

写真はイメージです ©AFLO

進学校に貧困家庭の子はいない

 高校生活はいきなりオリエンテーション合宿という名の勉強合宿からはじまった。

 中学からの友達はほぼいないところからのスタートだったが、この高校には様々な中学校から生徒が集まってきているということもあって、人間関係はみな探りさぐりだった。 

 中学時代、教室にいられなかった私にとっては、まずは普通に学校生活を送ることが課題だった。義務教育ではないので、不登校になれば退学せざるを得なくなる。

 最初のうちこそ集団生活が息苦しくて、休憩時間になると誰もいない教室に逃げたりしていた。それも友達ができてからは次第に落ち着いていった。

 X高で驚いたのは、あまりに治安がいいことだった。同じ中学校から来た面々だけ見ても、穏やかな平和主義の子たちばかり。いじめは3年間まったくなかった。グループはできるが風通しもよく、クラスの中心にいるグループの子たちも友好的だった。肌なじみがいいというか、色んなタイプの子が共存できる環境だった。

 そして、高校に入って感じたのは、どの子も両親が安定した職についているということだった。経済的に中流以上の家の子がほとんどだった。

自分はレアキャラだと気付いた瞬間

 思えば中学時代、相談室まで給食を届けにきてくれた友達は、余裕で進学校に行ける成績だった。でも、シングルマザー家庭に育った彼女は「親に負担をかけたくないから」と、あえて進学校を受けなかった。団地の子、フリースクールで出会った子、相談室の子たちは、みな定時制や商業高校に行った。 

「親が高校出たら働けって」

「うちは大学なんか行けん」

 不安定な家庭の子たちは、義務教育を終え高校を選ぶ時点で、選択肢が消えていったのかもしれない。

 私は高校に進学はしたものの、家では大学の話は一切、出てこなかった。一方で、高校の友達はみな、「大学行くのは当たり前って感じ」「親が就職のためにいい大学行けってうるさい」と言っていた。

「え? 大学行けって、いつから言われるん?」 

「中学とかかな? 気づいたら塾行かされてるしなー」