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ちなみ 上級コース? 初級、中級ってあるんですか?

小嶋 あくまでたとえですが。初級コースは主に単語レベルの練習をしています。それに何年もかかる人もいます。4コマ漫画の教材は、回復がだいぶ進んだ人に使います。

タケシ 手術から間もない人は、初級からやるんでしょうか? 

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小嶋 術後間もない時期っていうのは、身も蓋もない言い方になりますけど、ある意味、放っておいてもよくなる時期なんですよ。だから私はあんまりいじらないです。つまり、火事が燃え広がっているときに新しい家を建てる人はいませんよね。まずは消さなきゃと。火を消すっていうのは、脳の場合はどちらかというと医師の仕事であり、且つ、ある程度時間が経たないとそこに仮設住宅すら建てられないわけです。

「一日も早く言葉のリハビリを」は都市伝説?

タケシ 手術をした病院からリハビリ専門の大きな病院に転院したとき、「リハビリは早くやらないと効果が薄れる」と言われました。

小嶋 「一日も早くリハビリを」というのは半分は当たっていますが、半分は誤った都市伝説だと私は思っています。手足のリハビリと言語のリハビリでは大分状況が異なります。手足は、ご本人の意識がまだはっきりしていない時期から、関節が硬くならないように動かしてあげたりとか、やるべきことが色々ありますが、言葉のリハビリは、まず脳が落ち着いてからでないと、そもそも土俵に乗ることができません。なのに、一般の方にはそのような違いが必ずしもちゃんと伝わっていない。

 そういう現状があるので、まだ発症から日が浅いのに「もう遅いかもしれないんですけど、一日も早くって言われたから」と大慌てで私の所(市川高次脳機能障害相談室)にいらっしゃる方もいます。私はその都度「そんなことないですよ。たとえ3カ月後からでも、人によっては1年後からでも大丈夫なんですよ」と、言うんですけどね。

清水さんの脳のMRI画像。右下の黒い空洞が脳梗塞で壊れた左脳部分。発症時(左)に比べて、現在(右)は空洞が広がっている

ちなみ 私のように、3年後から始めても、遅すぎたということはない?

小嶋 ないです。もっと早くてもいいですけど、大丈夫です。それに清水さんの場合、私の所へいらっしゃるまでに、素晴らしいセラピストの先生方に出会われています。

タケシ 言語のリハビリと手足のリハビリは分けて考えないといけないんですね。

ちなみ 今日は本当に勉強になりました。ありがとうございました。

しみずちなみ/ 1963年生まれ。青山学院大学文学部卒業後、OL生活を経てコラムニストに。著書に『おじさん改造講座—OL500人委員会』(文春文庫)など。
 

こじまともゆき/ 1958年生まれ。言語聴覚士・医学博士。武蔵野大学大学院人間社会研究科教授。2006年「市川高次脳機能障害相談室」を開設。編著書に『失語症のすべてがわかる本』(講談社)など。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。