東洋一の繁華街、新宿・歌舞伎町。その華やかな世界の裏で、貧困にあえぐ女性に焦点を当てたルポルタージュ『歌舞伎町と貧困女子』(宝島社)が話題を集めている。

「トー横キッズ」「地下アイドル」「ホス狂い」「街娼」「風俗嬢」「外国人売春婦」「ヤクザの妻」――。

 コロナ禍の危機的状況から復活した街の主役は、中年男性からZ世代の若者にとって代わられ、売春が日常風景となっていた。そして“欲望の街”に引き寄せられる女たちは、「貢ぐ」ために貧困化している。 

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 貧困女子たちの生態を追い続けてきたノンフィクションライターの中村淳彦氏が明らかにする、歌舞伎町の裏側と貧困女子たちのリアルとは。『歌舞伎町と貧困女子』から一部を抜粋し、転載する(転載にあたり一部編集しています。年齢・肩書等は取材当時のまま)。

(全4回の1回目)

※写真はイメージです ©文藝春秋

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イケメン大学生が明かした「トー横キッズの真実」

「自分がトー横に行き始めたのは2020年12月くらい。最初の頃は18歳とか19歳とか年齢層が高かったけど、だんだん未成年が増えてきた。2021年6月にメディアで報道されてから未成年がどんどん集まって、夏休みには本格的に中高生だらけになっていた」

 そう語るのは注目された全盛期にトー横キッズだった大泉健斗くん(仮名、19歳)だ。健斗くんと未成年がいなくなった現在のトー横で待ち合わせた。「知り合いに会いたくない」という理由で新宿二丁目のカフェに移動する。

※写真はイメージです ©文藝春秋

 健斗くんは現在、都内の大学1年生で見惚れるようなイケメンだった。明るいタイプではなく、内向的で知的な印象だ。東京出身の実家暮らし。両親は健在。学費は親が出してくれていて家庭に問題はなかった。

高校2年冬からトー横が居場所に

 健斗くんは中学時代に集団生活が苦手だったことが理由で不登校になった。ずっと部屋に籠ってゲームをしているわけにもいかず、高校1年のときから新宿二丁目のバーに通う。ゲイの街として有名な新宿二丁目に通った理由は「学校と違って落ち着くから。多様性があったからかな」。高校2年生の冬から歌舞伎町のトー横が居場所となった。

 トー横キッズとはいったいなんなのか。健斗くんに聞いていく。

「端的に言えば、歌舞伎町のトー横という特定の場所に未成年や若者、それと未成年目当ての大人が集まったってだけ」