東洋一の繁華街、新宿・歌舞伎町。その華やかな世界の裏で、貧困にあえぐ女性に焦点を当てたルポルタージュ『歌舞伎町と貧困女子』(宝島社)が話題を集めている。

「トー横キッズ」「地下アイドル」「ホス狂い」「街娼」「風俗嬢」「外国人売春婦」「ヤクザの妻」――。

 コロナ禍の危機的状況から復活した街の主役は、中年男性からZ世代の若者にとって代わられ、売春が日常風景となっていた。そして“欲望の街”に引き寄せられる女たちは、「貢ぐ」ために貧困化している。 

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 ホストクラブで使うお金を稼ぐために「出稼ぎ風俗嬢」となった宮下あさ美(仮名、25歳)。彼女さらなる収入を求めて選んだ仕事は、無修正の同人AVへの出演だった。

 貧困女子たちの生態を追い続けてきたノンフィクションライターの中村淳彦氏が明らかにする、歌舞伎町の裏側と貧困女子たちのリアルとは。『歌舞伎町と貧困女子』から一部を抜粋し、転載する(転載にあたり一部編集しています。年齢・肩書等は取材当時のまま)。

(全4回の4回目)

※写真はイメージです ©AFLO

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1本番5万円の「同人AV」

 抜弁天から10分くらい歩いただろうか。

 抜弁天は丘陵にあり、職安通りのなだらかな坂を下ると東新宿駅と歌舞伎町が見えてくる。東新宿駅周辺は歌舞伎町の中心地から離れた端部であり、ラブホテルや中華料理店、韓国料理店が目立つ。

 明治通りの横断歩道を渡ると歌舞伎町二丁目となる。横断歩道を歩きながら左側を眺めると、複数のヤクザの組事務所がテナントとして入る通称「ヤクザマンション」が見える。歌舞伎町二丁目はホストクラブの密集地帯であり、街に掲げられる看板は「職業イケメン」など、ホストクラブの看板一色となる。

※写真はイメージです ©文藝春秋

財布の中には20万~35万円くらいの札束が

「担当の何が好きなのかとか、わからない。でも、もう3万円とかじゃ認められない。どんどん担当に対しての承認欲求みたいなのが増えていく。だから、私ね、勝手にお金使う。3万円しか使わない遊びを続けていても、意味ないかなって。もっとかまってほしいから、私が率先してシャンパンとか入れる。シャンパン入れると、すごく喜んでくれるからうれしい。そうなると、次からお金使わないで帰るとかしづらくなる。お金使ってくれなくなったって、冷たくされちゃう」

 財布を見せてもらった。kate spadeの長財布に20万~35万円くらいの札束が入っていた。いくら使うかわからないが、ホストクラブに行くときはいつも数十万円の現金を財布に入れる。