東洋一の繁華街、新宿・歌舞伎町。その華やかな世界の裏で、貧困にあえぐ女性に焦点を当てたルポルタージュ『歌舞伎町と貧困女子』(宝島社)が話題を集めている。
「トー横キッズ」「地下アイドル」「ホス狂い」「街娼」「風俗嬢」「外国人売春婦」「ヤクザの妻」――。
コロナ禍の危機的状況から復活した街の主役は、中年男性からZ世代の若者にとって代わられ、売春が日常風景となっていた。そして“欲望の街”に引き寄せられる女たちは、「貢ぐ」ために貧困化している。
貧困女子たちの生態を追い続けてきたノンフィクションライターの中村淳彦氏が明らかにする、歌舞伎町の裏側と貧困女子たちのリアルとは。『歌舞伎町と貧困女子』から一部を抜粋し、転載する(転載にあたり一部編集しています。年齢・肩書等は取材当時のまま)。
(全4回の2回目)
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卍會が未成年のトラブルを解決
トー横を語るうえで欠かせない「ハウル」の話が出てくる。ハウルとは2022年6月22日、当時16歳の未成年女性に対する淫行で逮捕された小川雅朝被告のことだ。小川容疑者はハウル・カラシニコフと名乗り、2021年6月に未成年のトー横キッズを支援する「歌舞伎町卍會」を結成、総会長を務めていた。
「卍會は最初から清掃団体と言っていました。いま広場はめちゃめちゃ汚いけど、当時はそんな汚くもなかった。掃除は団体を立ち上げるための大義名分。入会資格はハウルが気に入るか入らないかだけ。メンバーに40代、50代のおじさんもたくさんいた。やっていたことはトー横キッズの相談・援助とか、食事提供とか。未成年の集まりなのでトラブルは何かしら起こる。恋愛関係だったり、お金のこととか。それを卍會の大人たちが解決するみたいな関係でした」