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恋愛経験値ほぼナシの35歳大学教授がマッチングアプリに挑戦して気づいた、女性が「イケメンで高収入の男性」を求める“当然の理由”

『大学教授がマッチングアプリに挑戦してみたら、経営学から経済学、マーケティングまで学べた件について。』より#2

2023/01/26
note

 婚活市場ではマッチングアプリを通じて、自分の価値を否応なく知ることになる。一部の企業を除いて年功制賃金がベースになっている日本において、男性の財力は年代ごとに横並びに近い。

 それに対して、女性の若さと美貌は希少資源だ。だとしたら、自由に恋人や結婚相手を選ぶことが許された時代に、それを可能にするツールとしてマッチングアプリを用意されたら、希少資源を持つ女性が、より希少資源を持つ男性との交際や結婚を望み、より豊かな生活を求めても当然だろう。

 逆もまた真なりだ。途轍もない年収を稼ぎ出していたり、とんでもない美形の男性が、若さと美貌を持つ女性との恋愛と結婚の機会を独占しているのでは?

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 新自由主義があらゆる格差を広げたと言うが、恋愛と結婚にまで、その格差は浸透しつつあるのかもしれない。

アプリ女性は、自由恋愛の夢を見るか?(2022年12月1日)

 マッチングアプリに全く触らない週末を過ごして、月曜日からこれまで通りのアプリ婚活生活に戻った。

 アプリを約1年の契約にしていたので、残りは3 ヶ月ほどしかない。そしてTさんから、LINEに既読すらつかないことを心配している連絡が入っていたので、出勤しながら「仕事の締切が迫っていて、週末はなかなかお返事できず……!ご心配をおかけしました!」という内容の返事をした。

 金曜日の夕方から都合二日半も音信不通になったので、Tさんからは関係を切られてしまっても仕方がないと考えていたのだが、幸いなことにシャットダウンされることは無かった。

 本当にありがたい……と思いつつも、以前と比べてどこか心が乗り切れない自分に気づいた。

 心配してメッセージを送ってくれるTさんと、この前に出会ったパパ活女子は「私と出会う目的からして違う」のは理解している。

 しかしどうにも、送ってくれたメッセージには「裏」があるのではないかと気になってしまうのだ。

「不況の中で経済的に生き残ることが優先される競争社会になったいま、生きていくには結婚しか無いという女性たちにとって、心の純真さは性的無垢さ同様に女性の価値を保障するものでは無くなっている。このような風潮の中で、婚活の意味はもはや『女性が、安定して高収入を稼ぐ男性を捕まえる活動』の方に定着しつつある」(関口, 2010, 155-156頁)

 婚活を始めるにあたって読んだ社会学者による婚活研究の一節が脳内にフラッシュバックする。

 女性に対して「心の純真さ」を期待していたつもりはなかったが「相手は真剣な交際を目指して、向き合ってくれている」という、ある種の思い込みとも言えるような「前提」で私は取り組んでいたのかもしれない。

 そもそも、アプリ婚活を始めるにあたって「自分の年収と職業なら、きっと良い結婚相手を見つけられるのでは?」と考え、これまで学んできた理論を駆使してきた自分自身が、そもそも「純真さ」を失ってしまったのだろうか。

 しかし、「アプリ婚活を通じて女性の純真さが失われた」というのもどこか違う気がしている。

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