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渡辺 危ない考え方ですけど。

――投げやりのような気もしますよね。

長谷川 悪い方に取られたらそうですけど、要は、開き直りです。前のコンビの時、けっこう大きな番組とかにも出させてもらっていたんです。でも、そのときに、いいように見られたいとか、結果を残さなきゃと思って、緊張したり、カッコつけたりして、結局、ダメだった。変に力が入って。でも、スベってもいいやとか、嫌われたっていいやと思えたら、楽になったんです。ただ、そう思えるようになったのは、やっぱり40(歳)を超えてから。

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――そういう話を聞くと、芸人にとって、歳をとることのよさもあるのだなと思いますね。

長谷川 いや、気がつく人はもっと早くに気がつくんでしょうね。

渡辺 そりゃ早く気がつくに越したことはないですよ。

撮影 山元茂樹/文藝春秋

松本人志とハリウッドザコシショウがかけてくれた“最高の褒め言葉”

――でも、時間がかかったぶんだけ、遠回りしたぶんだけ、そう思えたときのエネルギー量が違った気もします。

長谷川 M-1で優勝したとき、同じ事務所のシショウ(ハリウッドザコシショウ)がLINEで「日本一のバカになれたな」ってメッセージをくれたんです。審査員の松本(人志)さんも、大会の最後に「いちばんバカに入れようと思った」っておっしゃってくれたんです。

渡辺 最高の褒め言葉だよな。

長谷川 それが本当に嬉しくて。

――2人はまだM-1に出ようと思えば出られますが、また出てみようかなと考えたりすることはあるものですか?

渡辺 考えないようにしています。

――考えると、出たくなってしまうからですか。

渡辺 迂闊に言っちゃうと、出なきゃいけなくなってしまうので。

撮影 山元茂樹/文藝春秋

長谷川 優勝した後も出てるのって、フットボールアワーさんと、NON STYLEさんぐらいですよね。あとパンクブーブーさんか。

渡辺 しかも全組、決勝の最終決戦まで残ってるから。この先、出てくるのかな。2回、3回と優勝するような、すっげえ芸人が。

――ただ、それをお客さんが見たいという空気になるかですよね。やはり新人発掘という意味合いの強い大会なので。

渡辺 だから、それをも凌駕するぐらいの芸人がこの先出てくるのか。本当の天才が。

長谷川 すごいね。出てきたら。

渡辺 この人(長谷川)は、年齢を重ねれば重ねるほどおもしろくなりますよ。そこは間違いないです。

笑い神 M-1、その純情と狂気

中村 計

文藝春秋

2022年11月28日 発売

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