かつて、水曜夜7時30分からの90分間、子どもたちをテレビの前に釘付けにした「川口浩探検シリーズ」(1978~1985年)。未知との出会いを巡る男たちの冒険は、「ヤラセ」と揶揄されることもあったが、そこに「真実」はあったのであろうか。
ここでは、時事芸人のプチ鹿島さんが「川口浩探検シリーズ」の裏側に迫った『ヤラセと情熱 水曜スペシャル『川口浩探検隊』の真実』(双葉社)より一部を抜粋。当時、探検隊として番組出演もしていた放送作家の藤岡俊幸が語る「真実」とは——。(全2回の1回目/後編を読む)
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ロケ1本に40万、拘束期間は数カ月
藤岡にとって、川口浩探検隊の“物語”は、放送作家として駆け出しだった彼の青春記そのものだった。
「そうですね。今どきここまで一つの番組に関わってる作家っていないですよね。今の放送作家って、1本の番組の会議だけ出てアイデアを言うとかだけですし。僕、水スペしかできなかったですよ、当時」
かかりっきりだったということだろうか。
「それまで、TBSのラジオ番組とか他のテレビ番組とか何本かやってて、収入が増え始めてたんですけど、水スペをやると決めた途端にド貧乏になりましたよね」
他の番組との、かけ持ちはしなかったのか。
「かけ持ちできないですよ。物理的に。2、3年大変でしたね」
確かに、くだんのロケの期間は、55日間という話だった。そんな長期間の拘束をされてしまえば、他の仕事もできまい。
「そう。1本40万だったかな。基本的にロケに行って40万もらってたと思います。でも2カ月とか3カ月に1本ですから大変だったですよ」
そこまでしても探検隊に青春を費やさせたものは何だろう。
「探検隊にはぜひ参加したいと思いましたね。だって、視聴者をどう面白く騙すかっていうテレビの原点がある。嘘と本当の狭間のバラエティって一番面白いじゃないですか」
あの当時は視聴者の側も壮大な夢を見させてほしいという欲求があったのだろうか。
「お互いに良い関係なんですよ。騙されて嬉しいし、『またやってるよ、嘘ばっかり』って言いながら。テレビの幸せな時代だったんじゃないですかね」
藤岡の言う「嘘と本当の狭間のバラエティ」という言葉はエンタメ論として重要ではないだろうか。つまり、嘘だからいい加減につくっているかと言えばそうではない。人びとを楽しませるために真面目につくっている。そして嘘の中にも本当のことは“たまに”ある。
「どこまでが嘘でどこまでが本当かっていうと、タイとか中南米なら現場に毒ヘビがいるのは事実じゃないですか。そこをどううまく演出するか、どう面白くドキドキさせるか」
“嘘”のなかで起きる“本当”
ヘビと言えば「恐怖! 双頭の巨大怪蛇ゴーグ!」(82年5月12日放送)という傑作回がある。ゴーグを探し求めるうちに、隊員達は地下がヘビだらけの寺院にたどり着いてしまう。地下一面がヘビ、ヘビ、ヘビ。番組屈指のインパクトがあるシーンだ。