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「親にも真実は言えないわけですよ」『川口浩探検隊』幻の“ネタばらし”特番が放送できなかったワケ

『ヤラセと情熱 水曜スペシャル『川口浩探検隊』の真実』より#2

2023/01/31
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「……心に葛藤を持たないでね。チクチクしないようになっただろうね」

 ──心がチクチクしてたんですか?

「してた」

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 小山は即答した。そして、天井を見上げながら続けた。

「フルハウス(制作会社)で僕を指導してくれたディレクターとか、そういう人たちが言ってたんです。『探検隊はテレビ界の面汚しだ』と。テレビの影響力ってやっぱり大きいじゃないですか。そういう中であんなものをやってはいけないって言ってる人たちが、業界の中にもいて。彼らのお師匠さんたちはテレビマンユニオンを作った人とかで、そういう流れを汲んだ会社だったんです。だから『お前たちに志はあるか』ってよく言われたよ」

 小山は79年に大学を卒業して1年半ほどフルハウスに在籍した。『出没おもしろMAP』(77年~79年・テレビ朝日)に携わったが、番組が終了すると出向で「川口浩探検隊」に行くことになった。

 以前にも出向した社員はいた。しかし彼らが「あんなところ、人間のいるところじゃない」と2、3カ月で戻ってきたので、小山に話がまわってきたという。

「フルハウスで探検隊について、さんざんひどいこと言われてるのに『お前行かない?』って。しょうがないから行くけど、番組は“本当のこと”だって言って仕事してるから親にも真実は言えないわけですよ。『今度はメキシコに行ったんだって?  大変だったね』って聞かれても『いや、俺は今回はメインじゃないから、仕込みを手伝ってからロケの最初のほうだけ参加して先に帰ってきた』って正直に言えない」

 人気番組には秘密があった……。探検が“本当のこと”だと思っている人がいる以上、たとえ相手が親だとしても“本当のこと”は言えない。小山の葛藤の始まりだった。

「親にも真実は言えないわけですよ」『川口浩探検隊』幻の“ネタばらし”特番が放送できなかったワケ

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