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 ただ、そんな親父ですけど、ちゃんと大学を出て教員免許も持ってるんです。でも、おじいちゃんが始めた家業を継がなきゃいけなかった。自分の人生はこんなはずじゃなかったと、やりきれない思いがどこかにあったのかもしれないなって。

『北斗の拳』で格闘技に目覚め、なりゆきでプロレスラーに

 家でも学校でもボコボコにされるんで、現実から逃避するために漫画に夢中になりました。当時、大阪に日本初の海外SF映画、特撮、アニメ関連グッズの専門店「ゼネラルプロダクツ」っていう店ができて、そこに行くのが唯一の楽しみになったんです。それと『北斗の拳』。

 最初は単純に面白くて見ていたんですが、だんだんケンシロウに憧れるようになっていき、「自分も体を鍛えよう」と考えるようになったんです。たまたま家の近くに「大池橋トレーニングセンター」というジムがあって、毎日通うようになりました。家業を手伝いながら。高校はほとんど行きませんでした。

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 親父は飲んでばかりでなにもしないんです。飲酒運転で免許を失って。代わりに僕が得意先まで30kgの荷物を積んで自転車で配達したりして。しかも1日に1回じゃなく何回も。おかげで足の筋肉は自然に鍛えられましたけどね(笑)。

 しばらくずっと、家業を手伝いながら、それ以外はすべてトレーニングに費やす日々。で、21歳のとき、パワーリフティングの新人戦で準優勝したんです。22歳のときにはボディービルでも大阪のバンタム級で3位。もしかしたら自分もケンシロウみたいになれるんかなって思うようになったんです。格闘技をやってみたいなって。

 そのうち、大阪の天神橋筋六丁目の近くに「龍生塾」の支店ができまして。総合格闘技を教えてくれるらしいということで行ってみたら、シュートボクシングと空手がメインだったんです。「総合格闘技って聞いたんですけど」って聞いたら「たまにやるよ」って。それでとりあえずそこに入って。

 岩下伸樹(注:シュートボクサー。元SB世界ヘビー級王者)さんが先輩だったんですが、岩下さんと練習をすると毎回マットに血がべったり。バカスカ殴られるわ蹴られるわ(笑)。相当鍛えられました。僕のいままでの人生、殴られっぱなしだったんで、それを挽回するように一心不乱に取り組むようになりました。

 それからしばらくして、龍生塾が「プロレスの興行で試合をやりたい」と言い出した。僕、中島らもの『クマと闘ったヒト』っていうエッセイにも登場する「ミスター・ヒト」っていう伝説のレスラー・安達勝治さんがやってたお好み焼き屋さんによく通ってたんです。安達さんが「金ないんなら食わしたるから来い」って言ってくれてたんで。それで、安達さんをジムに紹介して。安達さんからたどり着いたのが大日本プロレスでした。

 すると、ある日突然「今度大阪大会やるから」とジムに言われ、対戦カードに僕の名前が入ってたんです。