傷だらけの心と体をサウナが救ってくれた
「おふろの国」の林和俊店長がプロレス好きで。以前から大日本のレスラーたちをイベントで使ってくれていたんですが、僕の事情を知った林さんが登坂社長と話してくれて、「よかったらうちの会社に来ませんか」と誘ってくれたんです。
最初の仕事は閉店後の清掃で、毎日深夜1時半から作業を始めて朝9時までびっちり。精神的にも肉体的にもしんどくて、体重が30kg以上落ちました。そして、清掃だけだと収入的にもちょっと厳しいという話を林さんにしたら、「サウナで『熱波』というのがあるんで、やってみませんか? たまにやってもらったらいいんで」と言われて。そこが最初でした。
ただ、最初は月に1回程度で、生活の足しにはまったくならず(笑)。林さんは熱波師が話題になるはずだと最初から考えていたみたいなんですが、僕自身はまったくピンときてなかったし、そもそもロウリュをちゃんと理解できていなかった。
熱された石にアロマ水をかけて、とりあえず扇いでただけなんで。お客さんに「そんなのいらない」と言われたり、タオルを投げつけられたことも数え切れないほどありましたし。
それでも地道にやり続けていたら、少しずつ喜んでくれる人が出てきたんです。なにより、やっている僕自身が心も体もどんどん健康になっていることに気づいたんです。
毎日サウナに入るじゃないですか。仕事でロウリュするし、仕事が終わった後も入る。体に熱を入れて水風呂でクールダウンさせ血流が良くなって、ということを繰り返すことで、だんだんと体中の痛みがやわらいでいくのがわかったんです。
睡眠の質も断然良くなった。「あれ、これって体にええんちゃうかな」って。そこからサウナのことをもっと知ろうと調べ始めました。お客さんに「熱波ってなに?」と聞かれたときに、その効果をきちんと説明したいと思うようになったんです。
うちの熱波師って、サウナ室でバスタオルを手に「パネッパー!」とか叫ぶ印象が強いかもしれませんが、本当は僕のスタイルではバスタオルは必要ないと思っていて。ロウリュのクライマックスは、蒸気が立ちのぼるところ。本当はそれだけでいいんです。
僕の中ではロウリュを立てて天井で充満させ、それをゆっくり入浴者の頭上から下ろしてきて完成。ただ、たくさんの人にエンターテインメントとして楽しんでもらうために、バスタオルを振ったり除夜の鐘の108回熱波とかやりますけど(笑)。
なぜ僕がここまでやるかというと、人間の体にいいことをやっているという確信があるのと、この活動がメディアに取り上げられ、僕が評価されれば、死んでしまった親父が褒められているみたいでうれしいんです。
うちってお墓がないんです。債権者に金づちで破壊されちゃったんで(笑)。でもよく考えたら、父と母のDNAが入っているこの体自体が墓標じゃないかと。だからサウナに入ってくる子供たちに「お父さんとお母さんが本当に好きなら、自分の体を大切にしなさい。それが最終的にみんなを守ってくれるから」って伝えています。
じゃあ大切にするってどういうことか。体を定期的にきちんと温め冷やすこと。サウナと水風呂です。人体は精密機械。メンテナンスが大事なんです。
僕がやってきたことって、家業もプロレスも、その時々は点だけど、結局全部が繋がって線になっていったと思うんです。熱波師はまさにその延長線上。いま、「おふろの国」で熱波師検定の講師として、サウナの良さをみなさんに伝えていますが、僕は「教えている」とは思ってません。親父みたいに教員免許もないし(笑)。純粋に文化としてのサウナと水風呂を伝えていきたいんです。
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