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刺青&タトゥー客を拒絶しないのにも深い理由が…六本木の老舗サウナ「アダムアンドイブ」誕生秘話「サウナはみんな平等に気持ちよくなる場所ですから」

『サイコーサウナ』 #2

2023/01/21

source : ライフスタイル出版

genre : ライフ, ヘルス, 人生相談, 働き方

 でも、27歳になったとき、年齢的にも将来の方向性をちゃんと決めないといけないと思い、先代である父と話をしました。父の気持ちとしては、やっぱりここを継いでほしいと。僕も子供の頃からお風呂はずっとここだったし、留学をしたり自分の好きなことを好きなようにやれたのも、全部ここがあったから。やっぱり他人に任せるわけにはいかないと考え、父の会社に入社しました。

 ただ、当時はあまりにも韓国のことを知らず、韓国語を完全に忘れていました。正式に会社を継ぐ前に、一度韓国へ行ってほしいと父に言われ、韓国に1年ほど住み、韓国のサウナ文化を体験して回ったりもしました。街の小さな銭湯のようなサウナから、大型の施設のサウナまでをいろいろと。昔の韓国人は毎日サウナに行ってたんです。

 日本人が街の銭湯に行くような感覚で。でも、いまは施設の数も減ってしまいました。現代の若い人たちにとって、サウナは毎日ではなく、イベント的なもの。友達とご飯食べてその後みんなでサウナ行って寝転んで。いまの一般的な日本の若い人と同じような感覚だと思いますね。

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日本一安全なサウナです

 もともと女性専用サウナ「イブ」をやってた頃、オロナミンCにヤクルトを入れる飲み物があったんです。ただ、おいしいんですけど、汗をかいた後だとちょっと甘みも強いし、量も水分補給にしては足りない。すると父が、「じゃあオロナミンCにポカリスエット入れちゃったら?」って言い出して。実際にそうやって飲んでみたら「これすごくおいしいね!」って。それで「オロポ」が誕生したんです。

サウナドリンクの金字塔「オロポ」(写真:筆者撮影)

 でも既存の製品を混ぜただけなので、僕らが発明したんですと大々的に言うのはちょっと忍びないというか。都市伝説的に、みなさんの間で「アダムアンドイブが発祥の地」という認識だけあれば、僕らはそれで十分。

 ただ、うちはビールがほとんど出ないんですよ。東京でいちばんビールが出ないサウナなんじゃないですかね(笑)。サウナブームになって一層拍車がかかりました。

 以前はサウナで汗を流した後は、食堂で冷えたジョッキでビールを飲むのが暗黙のルールだったんですが、みなさん結果的にオロポになっちゃうんです。中にはたまに食事と一緒に生ビールを頼まれる方もいらっしゃいますが、オロポに比べれば本当に微々たるもの。