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「“赤ちゃんポスト”出身だとは言いたくない」3歳で「ゆりかご」に預けられた男性(19)が語る、里子たちの現状

宮津航一さんインタビュー#2

genre : ライフ, 社会

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今も30人以上の子どもの出自がわからない

 これまでに「ゆりかご」に預けられた子どものうち30人以上の子どもの出自がわかっていません。当事者として、預ける方には名前でも写真でもいいので、できれば何か一つでも情報を残してほしいと思います。

 あとは迎え入れた親が子どもに対して出自の告知をしっかりしてほしいと思います。私の場合は3歳で引き取られたので産みの親ではないことを理解していましたが、乳児で引き取られると親が告知をしない限り自分の生い立ちについて知る術がありません。つまり出自の告知がないと、子どもは出自を知る権利を行使することはできないのです。その意味でも出自の告知と「ゆりかご」に預ける際にできるだけ出自に関することを残すという2点は、双方の親が考えて実現していってほしいと思います。

4人のお兄さんに囲まれる航一さん 写真=本人提供

――宮津さんは以前「こうのとりのゆりかご」が「赤ちゃんポスト」と呼ばれることについてTwitter上で「残念だ」とおっしゃっていましたが、それはどういう理由からでしょうか。

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宮津 小池百合子都知事も昨年12月の記者会見で、「郵便物を投函するような安易さを感じさせる」とこの件について言及していましたが、私自身も同じで、「赤ちゃんポスト」と呼ばれるが故にその本来の目的が伝わってない部分が多いんじゃないかと思っています。ポストという表現に、ポンと託すような、捨てるようなイメージがやっぱり少なからずあるのかなと。

 私自身もそうですし、預けられた他の子どもたちのことを考えた時にも、「赤ちゃんポスト」に預けられましたとはやっぱり言いたくないと思うんです。発信の広がりという観点で言えば、「赤ちゃんポスト」の方が伝わりやすいのかもしれませんが、この名称問題については広く議論されるべきだと思っています。

「こうのとりのゆりかご」が果たす大きな役割

――2007年に熊本県に「こうのとりのゆりかご」が設立されて16年が経ちますが、いまだに他に設立された事例はありません。宮津さんはそれに関してどうお考えでしょうか。

宮津 この16年間、社会に広がってないというところを実感しています。「こうのとりのゆりかご」は1つの選択肢に過ぎませんが、大きな役割を果たしていると思います。現実問題として経済的、精神的、体力的に子どもを育てるのが難しいという家庭があります。育児は孤独になりやすいため1人で悩む親もたくさんいると思います。

 やはりそんな時に、最後の最後に「こうのとりのゆりかご」に預けるという手段があることは、たとえ預けなかったとしても非常に大きな意味があると思っています。