熊本ではこれまでに161人の子どもが助けられてるという結果がありますので、熊本県以外でもこの動きが広がってほしいですね。
――設立する場合には乳児の状態を診断するために、医師が常駐していなければならないなど、設立要件を満たすのが難しいという問題もあるようですね。
宮津 そうです。神戸で一度設立される動きがあったのですが、結果的に断念することになったみたいです。慈恵病院は、全国で唯一、24時間、365日、フリーダイヤルで相談に対応していますが、民間の病院でそれをやるのはなかなか難しいと思います。多くの子どもたちの命を繋ぐために何が必要なのか、今は内密出産という制度もありますので、まずはいろんな方に関心を持ってほしいと思います。
――「こうのとりのゆりかご」の出身であることを公表してから約1年が経ちますが、何か変化したことはありますか。
宮津 当事者として発信したことで、「ゆりかご」や里子について理解していただける機会が増えたように思います。公表前は批判的なコメントがたくさんくるだろうと予想していたんですが、思った以上に少なかったことに驚きました。
以前は里子や親がいない子ども=不幸せだと思われることが多かったんですが、僕の生活や発信を見た多くの人たちが「公表してくれてありがとう」、「ゆりかご出身の子がこんな生活をしていたとは知らなかった」とコメントをくれました。
そして公表したことで「ゆりかご」に預けられた他の子どもたちと繋がることができたのも大きかったですね。
近年、養子縁組を希望する人が増加
それと里子でも大学に進学できるんだと驚きの声も多かったんですが、昨年、児童養護施設や里親の家庭で暮らす子どもや若者が支援を受けられる年齢の制限が撤廃されました。以前までは原則18歳(最長でも22歳)で自立を求められていたので、大学に進学するのが難しい部分もあったんですが、今は年齢ではなく自立可能かどうかで判断されるので、進路の幅が広がりました。
熊本県内でもそういう自立した子どもを支えるシェアハウスがあったり金銭的なところで支援をしたりと、十分ではないと思いますけど、支援の輪が広がってきていると思います。
――里親に登録されている方は増えているのでしょうか。
宮津 里親が足りないというのはよく言われています。逆に養子縁組を希望する人は増えてきていて、養子を待っている方も結構いるみたいです。最近では養子縁組里親(子どもに保護者がいない場合や、実親が親権を放棄する意思が明確な場合などに、特別養子縁組を前提として子どもを預かる里親)を希望する方もいて、地域によってもさまざまなケースがあるようです。