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「“赤ちゃんポスト”出身だとは言いたくない」3歳で「ゆりかご」に預けられた男性(19)が語る、里子たちの現状

宮津航一さんインタビュー#2

genre : ライフ, 社会

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4万6000人の子どもが施設で暮らしている

 ただ、やっぱり子どものニーズという観点から見ると、養子縁組を前提としない養育里親がもっと必要なのかなと思っています。養子縁組里親となると基本的に1人だけを預け入れて親子になるわけですが、今4万6000人ぐらいの子どもが社会的養護の対象になっています。1人でも多くの子どもが施設よりも家庭に近い環境で育つ方がいいと考えているので、そのためにも養子縁組を前提としない養育里親を希望される方が増えてほしいと思いますね。

――宮津さんは2021年から子ども食堂の活動を始められました。きっかけは何かあったのでしょうか。

宮津 いろいろなボランティア活動をしてきた両親の存在が大きいです。あとはコロナの影響もありました。ステイホームや自粛であまり外に遊びにいけない子どもたちには人と繋がることができる場所が必要なんじゃないかと思って。決定的なきっかけとなったのは、福岡県で起きた男児の餓死事件です。ご飯が与えられずに亡くなってしまう子どもを減らしたいと思い、身近な場所から子ども食堂を始めました。

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子ども食堂看板を持つ航一さん 写真=本人提供

 最近では平均して50人ほどの子どもが来るようになっています。単に食事をする場所ではなく、地域と関わる子どもたちの第三の居場所的な役割を果たしていると思います。お腹を満たすだけじゃなくて心を満たす場所になってほしいと思い、気軽に話せる関係性を築いたり、いろいろなレクリエーションを計画したりと、力を入れて取り組んでいるところです。

「ゆりかご」に預けられた子どもたちの声を代弁していきたい

 子ども食堂を始めて約2年が経ちますが、いろんな子どもたちの背景が見えてきました。いじめを受けてる子や貧困家庭の子など、居場所を必要としている子どもがたくさんいました。地域との関わりが少なくなっている今、改めて地域のコミュニティがいかに必要かを実感しましたね。何か変化があったら、周りが声をかける、相談に乗るという体制をもっと作っていかないといけないと思っています。

子ども食堂の活動を行う航一さん 写真=本人提供

――最後に宮津さんの今後の目標を教えてください。

宮津 具体的なものは決まっていないんですが、子どもに関わる仕事をやりたいと思っています。

「ゆりかご」のことに関していえば、これまで預けられた子どもたちがどんどん成長して大きくなってきますので、そういう子どもたちとの集まりの場を作って1人じゃないということを伝えていきたいです。その子どもたちが顔を出したり発信したりできなかったとしても、その子どもたちの声を代弁していきたいです。

「“赤ちゃんポスト”出身だとは言いたくない」3歳で「ゆりかご」に預けられた男性(19)が語る、里子たちの現状

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