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誤解3:「五十肩」は動かさないと硬くなる

 もう一つ、五十肩に関する誤解を鈴木医師は指摘する。

 五十肩治療の基本は、「急性期は冷やして安静」、「慢性期は温めて可動範囲内で動かす」。

 しかし、医師の中には「動かさないと硬くなるから」と、まだ炎症があるうちから積極的に動かすように勧める人もいる。頭上に設置された滑車を通したロープを両手で握って、左右の腕を交互に挙げる「滑車運動」などを奨励する医師がいるので要注意だ。この運動は、健康な人の筋力増強には有効かもしれないが、五十肩の人には危険過ぎる。

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「炎症があるうちに無理に動かすと、痛いだけでなく組織の炎症や損傷が悪化します。少なくとも痛みの強い間は安静にし、動かすにしても“痛みの出ない範囲内”が鉄則です」

 肩に痛みが出たときは、それが五十肩なのか、あるいは別の原因があるのかをきちんと見極め、それに適した治療を受けるべきだ。そのためには、なるべく早い段階で肩を専門とする整形外科医の診断を仰ぐことが必要だ。病院のホームページの医師の紹介を見て、専門分野に「肩肘関節」とあれば安心だし、そうでなくても診断でMRIを撮るか否かだけでも、その医師が腱板断裂の可能性を視野に入れているかどうかがわかる。

長寿病の若年化が進行している ©iStock.com

誤解4:「五十肩」は中高年の疾患だ

 最後に、五十肩の予防法について。

 そもそも最初の炎症が起きる原因が解明されていないので、はっきりとした予防法はないのだが、鈴木医師によると「姿勢の良し悪し」は大きく関係しているという。

「肩こりの人は五十肩になりやすい、と言われますが、これは肩こりの背景に姿勢の悪さがあるから。肩に負担をかけないためには、胸を開いて肩甲骨の間が狭くなるような姿勢が理想的。言い換えれば“猫背”は五十肩のハイリスクです」

 鈴木医師によると、最近はパソコンやスマホの多用で、若いうちから猫背の人が増えており、20代や30代で五十肩になるケースもあるという。長寿病の若年化だ。いま、これを読んでいるあなたの姿勢はどうだろう。

 発症から早7カ月。筆者はこの原稿を書き終えたら、鈴木医師のもとでMRI検査を受ける予定だ。その結果もし五十肩ではなく腱板断裂だったとしたら、これまでの苦難に満ちた半年間は無駄だったことになる。読者諸賢におかれては、くれぐれもこうならないよう、細心の注意を払っていただきたい。