「言いたくない」なら突っ込まない
――立浪監督の発言も多めに引用されていると感じました。
岡田 テレビのニュースなどでは短いコメントしか報じられませんでしたが、実際にはもっと長く話しているんですよね。たとえば、選手たちの前で「相手に弱気な顔見せんなよ」と話した後に、現役であることがいかに幸せかを語っています。前者はクローズアップされますが、後者はなかなか伝わらないので、短く切り取らずに見せたいと思っていました。
――岡田さんが印象に残ったシーンを教えてください。
岡田 今回は僕が選手にカメラを向けて直接話を聞いている中で、驚いたり感動したりした場面を残していくという形で編集しました。ディレクター的な目線もありますけど、ドラゴンズファンとしての目線のほうが大きいかもしれません。
髙橋宏投手との会話で「柳さんからLINEもらうんですよ」と言ってくれたので、内容を教えてもらったら、すごく熱いメッセージが送られてきていたんですね。しかも、髙橋宏投手が登板するたびに、マウンドから下りた直後ぐらいのタイミングで送られてきている。先輩が後輩にそんなことをしてるなんて、と、すごく驚いたので入れさせてもらいました。
選手たちの言葉の力強さにも驚かされることが多かったです。石川昂選手は来季について「~します」と必ず言い切るんですよね。本当に頼もしかったですし、希望があると感じました。
――予告でも使われていた岡林選手の「出たいに決まってるじゃないですか!」という言葉や、投手に転向した根尾選手が「悩んでないっすよ」と言いつつ少し目が潤んでいるように見えた場面もすごく印象に残りました。
岡田 たぶん、テレビだったら上司や先輩に「もっと突っ込めよ」と言われていたと思います。テレビは短い尺ではっきりさせないといけないので。でも、選手から「言いたくない」という意思が見えれば、それ以上は突っ込みませんでした。その分、映像で表情や雰囲気を伝えているつもりです。ひょっとしたら目が潤んでいたかもしれない。違うかもしれない。それは観ている人に汲み取ってもらえばいいと思っています。
――そういう姿勢が岡田さんと選手の間の信頼関係につながっているんでしょうね。
岡田 そう思ってもらえているならいいんですけど(笑)。
「さらにドラゴンズが好きになった。応援したくなった」
――ナレーションにサカナクションの山口一郎さんを起用した経緯を教えてください。
岡田 スポーツドキュメンタリーのシリーズとして一歩踏み出すなら、山口一郎さんのお力を借りなければいけないと思っていました。活動をお休みしているタイミングでのオファーだったのでダメモトでお願いしてみたら、「断るわけないでしょ?」というお返事をいただいて。
この作品は、本当にドラゴンズを愛している人たちがお金を払ってまで観てくれるものなので、ファンと同じ熱と思いを持っている方に携わってもらいたくて、すぐに思い浮かんだのが山口さんでした。
事前にお送りした映像を見てもらったにもかかわらず、収録現場でも映像を食い入るようにご覧になっていて、合図を出してもナレーションを読むのを忘れることがありましたね(笑)。「さらにドラゴンズが好きになったし、今年一層応援しなければいけないと思った」と言っていただいて、すごく嬉しかったです。ご本人には伝えてないのですが、いつか映画になったら曲を書いてほしいと思っています。
――エンドクレジットは選手だけでなく、オーナー以下チームスタッフ全員の名前が記されていました。
岡田 チームスタッフの方たちがいなければ僕は撮影できなかったので、感謝の意味も込めて入れさせてもらいました。最初は球団の一体感を出すために、営業の方なども含めた球団職員全員の名前を入れようとしたのですが、今回は選手とチームスタッフのみにしています。
エンディングの曲を「燃えよドラゴンズ!」にしたのは、水木一郎さんがお亡くなりになった一報を聞いて、ほんのささいなことですけど、感謝の表現の一つになればと思って使わせていただきました。
――ところで、制作は何人でやっていたんですか。
岡田 球団映像の素材出し、ナレーション録り、テロップの仕上げなどはいろいろな方に手伝っていただきましたが、それ以外は僕一人です。年末年始もずっと作業していました。
――本当にすごい……。苦労されたところはありましたか。
岡田 苦労というのとは違うかもしれませんが、編集が終わった直後、作業していた僕のパソコンの電源が入らなくなりました。きっと力尽きたんだと思います(笑)。
――YouTubeともども来季もドキュメンタリー作品を期待しています。優勝の歓喜のシーンを映画館でファンと一緒に観たいですね。
岡田 今回が好評なら来季も続けていけると思いますし、映画館での上映やDVD化など、さらに規模の大きなこともできると思います。ぜひとも1月29日までの配信期間内に「Truth of Dragons 2022」をご覧ください!
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