国境を越えてヒト・モノ・カネ・情報を移動させ、新たな経済圏を創出するというグローバリゼーションの発想は、この30年間、各国で実践され、世界経済は発展を遂げた。その一方、先進国中で日本だけが唯一後退しているのは周知のとおりだ。
何がいけなかったのか?
日本が後退している「シンプルな原因」
理由はいくつもあるだろうが、その中でもシンプルかつ明らかな原因がある。それはグローバル化の柱のひとつ「国境を越えたヒトの移動」ができなかったからだ。単純労働のための海外人材の雇用は増えたものの、日本のビジネスに付加価値を与えてくれるような高度人材を世界から募る日本企業はまれだ。
一方で、MicrosoftやGoogleのCEOにインド人が就任するほど米国では人材のグローバル化が進んでいる。もちろん米国人が逆に外国に出て企業や学校で活躍するケースも多くある。それは米国のみならず世界中の先進国で起きている現象だ。だが残念なことに、日本人が海外企業でその能力を発揮するケースは多くない。
少子高齢化に伴う人口減少により、国内市場は今後縮小の一途をたどる。海外市場に活路を見出すより他ない状況の中、グローバルに通用する人材も企業もなかなか輩出できないのが今の日本だ。
そうなった根本的な原因の一つが日本の教育システムにあると考える。日本の教育は知識習得と自己鍛錬には効果的だが、情報化とグローバル化が進み、将来の予測が難しい現代社会にマッチしているとは言い難い。
グローバル化に必要な「4つのC」
では、どのような教育が必要なのか? 全米教育協会は2014年にその回答として「4つのC」を提案した。それは、以下の4つの伸ばす教育だ。
(1) Communication(コミュニケーション)
(2) Collaboration(協働)
(3) Critical Thinking(批判的思考)
(4) Creativity(創造性)
このうち誤解されやすい(3)について少し解説をしたい。
批判的思考とは、言われていること(議論)を鵜呑みにせず、「なぜか?」という問いを繰り返し、議論の構造を明らかにする手法だ。決して反対の立場に立って考えることではない。