――『グッドライフ』という生活情報番組の中の15分のコーナーだったのが、独立したんですね。番組のスタイルは、最初からいまの通りですか。
吉田 河本邦弘さんのナレーションも、『Egyptian Fantasy―エジプトの幻想―』というテーマ曲も、ずっと変わっていません。記念すべき第1回は、吉祥寺の「いせや総本店」でした。番組のオープニングに映っているのも、このお店です。フォークシンガーの高田渡さんがここの常連で、撮影の日もいらっしゃったので偶然映り込んでいたのも、懐かしい思い出ですね。
2008年に土曜日の30分枠として独立して、翌年4月に現在の月曜夜9時からの1時間枠になりました。そのときから、基本15分番組の新作1本と再放送3本という構成です。
「お客さんも含めての酒場」いつもの雰囲気を壊さない工夫
――全都道府県の酒場を訪れて、紹介したお店は1100軒を超えるとか。どうやって決めているんですか。
吉田 当初は、僕の知っている下町の酒場を回っていました。やがて制作スタッフが街を歩きながら探して、下見を経て決めるようになりました。撮影に行って、「こんなところに店があるの!?」って思うときもありますけど、結局は面白いお店に行けています。そういう意味では、まだまだドキドキ感があって楽しいですよ。
お店の方の人柄も、さまざまです。コミュニケーションが苦手で無口な店主でも、実は喜んでいたり。映像的にどう映るかは、わかりませんけど(笑)。
――取材に際して、気を付けてきたことはありますか。
吉田 必ず、営業時間中にお邪魔することです。お店の個性や雰囲気は、店主と従業員、店構え、酒と料理、それにお客さんが一体となって、醸すものです。だからお客さんも含めて映さなければ、そのお店を紹介したことになりません。
お客さんが緊張したままだと困るので、お店に入って数分後には「かんぱーい!」をやります。実際は、皆さんすでに飲んでいますから、固いお顔はあまり見ませんけどね(笑)。
みんなで一緒にわいわい飲んでいるお店紹介の番組はなかったと思いますから、それなりに画期的だったのではないでしょうか。視聴者がそのお店へ行ったとき、「なんだ、テレビで観たのと違うじゃないか」とガッカリすることは、ほぼないだろうと信じています。