2020年初頭、新型コロナウイルスが日本に上陸。「夜の街が感染源」とやり玉に上げられ、飲食業界は苦境に追い込まれた。人気番組『吉田類の酒場放浪記』(BS-TBS)も、新たな取材ができなくなった。
このピンチをどう乗り越えたのか。吉田類さんが語る。
コロナ禍で酒場はいきなり悪者扱い
――新型コロナウイルスが流行すると、「夜の街」が感染の元凶だと批判されましたね。世の中は「不要不急の外出自粛」。飲食店は時短営業を要請されて、アルコールの提供が禁止になりました。
吉田類(以下、吉田) そうそう。酒場や酒がいきなり悪者になっちゃって、本当にやるせなかったですね。酒蔵やお酒の販売店や飲食店も国の経済に貢献してきたのになあ、なんて思ったりしました。
――コロナの直撃を最も受けたのが、番組で取り上げるような個人経営の飲食店でした。
吉田 そうなんですよ。相当なダメージがありました。
東日本大震災のあと、風評被害に抗うために「我々酒飲みにできる応援は、酒を飲むことだ」を合言葉にして、被災地のお酒や食べ物のPRや酒蔵への支援を行ないました。しかし今回は、そうしたこともできません。苦境に立たされた飲食業界を応援し続けようという意図もあって、せめて番組は一回も休まずに続けようと決めました。
――しかし飲食店が閉まってしまうと、取材ができません。どうやって番組を続けるか、困ったのではないですか。
吉田 とにかく、やれる方法と場所を探しました。密にならないように奥多摩まで出かけて周りにお客さんがいないお店を取材したり、自分のアトリエの庭にテントを張って「ベランピング」をしたり、以前に訪れたお店の店主とリモート飲み会をしたり、いろいろと工夫しました。観ている方は意外と喜んでくれたので、従来の形が崩れても心配はなかったですね。