1ページ目から読む
2/3ページ目

酒場の灯りは決して消えない

――取り寄せのおつまみで「お家呑み」をしたら、新しい発見があったそうですね。

吉田 たとえば日本酒を出す酒場では、日本酒に合うおつまみを揃えています。でもお家呑みだと、お酒とおつまみを自由に組み合わせられるんです。いまは遠方からでも好きなものが取り寄せ可能ですから、メーカーへの支援にもなります。

 

 地方には、まだまだ知らないお店や知らない食べ物がいっぱいありますね。日本の食文化の豊かさに、改めて気付きました。

ADVERTISEMENT

――徐々に通常の営業ができるようになって、お店での撮影も可能になりました。

吉田 それでも再開直後は撮影対象のお店がお酒を提供しておらず、ウーロン茶にした回が1回だけあります。いまもまだ、取材は営業時間外に貸し切りでやっています。お店の方とは距離を保ち、スタッフはマスクをつけたままです。消毒など、感染対策には相当気を遣っています。注目していただいている番組だけに、危機意識は高いんですよ。

 本来は仕込みに充てる営業前の2時間を提供してくれたお店に対しては、少しでもお金を使わなきゃって思うわけです。だから撮影が終わったら、スタッフみんなでお礼の意味も込めて食べて飲むようにしています。コロナのおかげで取材は1日1店舗になりましたけど、酒量は多くなったかもしれません。

――「お客さんも含めての酒場だ」というお話がありましたけど、お客さんが映って賑わっていたほうが、やはりいいお店に見えましたね。

吉田 実際には、酒場には人が戻ってきています。その雰囲気を放映できないのは残念です。僕も、静かに独りでチビチビ飲むよりワイワイやるほうが好きなので、酔うほどに楽しくなるんですよ。

 残念ながらコロナで閉めてしまったお店もいっぱいあって寂しいですけど、人生ですから立ち止まるわけにいかない。前へ進むしかありません。

 

――酒場の灯りは決して消えない、ということですね。

吉田 お店の人やお客さんとの適度なスタンスを、僕は以前から心がけてきました。「酒場の間合い」と呼んでいますが、酒飲みのダンディズムというか、大人として大切な飲み方のひとつです。なのでコロナによるディスタンスも、割と平気だったんです。コロナ禍で身につけた「ソーシャル・ディスタンス」という他人との距離感を、今後は上手く活かせばいいんじゃないかと思いますね。

 コロナの異変はじゅうぶん受け取りましたけど、飲んだり食べたりを人は止められませんし、家呑みと両方あっていいんじゃないですか。家では、酒場が出してくれるような料理を作れませんしね。僕なんか、外食が一番好きですよ。