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20年間撮影を続けて気づいた変化とは

――この20年の間に、酒場のあり方やお客さんの気質は変わりましたか。

吉田 大きく変わったのは、女性の進出です。番組としては、女性にとって敷居の低い店を選んできましたけど、女性がこれほど飲むようになるとは思いませんでした。女性のひとり飲みも、当たり前になりましたね。スマートにカッコよく飲んでいるひとを見ると素敵だなと思います。

 もうひとつの変化は、クラフトビールをはじめとして、お酒の種類がすごく増えたこと。目が飛び出るくらい美味い酒が、どんどん出てきてますよ。

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――50代だった類さんは、73歳になりました。お酒の量は変わりませんか。

吉田 多いときは、いまでも多いです(笑)。昨日はワイン1本と、日本酒の四合瓶を1本半ぐらい。でも二日酔いをしたことがないので、今朝も早く起きてゴミ出しをしました。

『酒場放浪記』のスタッフには、「100歳までやるぞ!」と言ってるんです。杖を突いても日本全国を回って、美味しいお酒と食べ物を探し続けたいと思っています。

©BS-TBS

――ご健康には問題ありませんか。

吉田 健康診断は受けてますけど、まったく問題ないですね。いつも医者にびっくりされます。だいたい、肝臓の数値が理想的なんです。

 身体は、山に登ったりして鍛えていますから。特に下半身を使いながら山道を歩くのは、循環器系にいいみたいです。「ふくらはぎは第二の心臓」と言われるくらいですから。

 酒場の取材に行けば、そのお店のいいところを探して楽しむように心がけているので、ストレスが溜まることもありません。

「酒場文化が廃れない以上、『酒場放浪記』も続きますよ」

――それにしても、ひとつの番組を作り続けて20年。すごいことです。

吉田 一昨年には制作スタッフが、全日本テレビ番組製作社連盟から「ATP賞特別賞」をもらいました。番組制作の業界では大変な権威のある賞で、晴れがましいことです。お祝いに引っ張り出されて、「スタッフもみんな酔っ払いながら、楽しんでやってます」とスピーチしたら、えらいウケました。

 スタッフとも、長くなってくると家族みたいな感じで、ワンチームでやれています。もともと『酒場放浪記』が好きで入ってきてる人が多いのも、長続きの秘訣だと思います。

 

――紹介すべき酒場は、まだありそうですか。

吉田 あります、あります。取材対象になるお店は、東京近辺だけで5000軒から6000軒は残ってるでしょう。「飲んで酔っ払ったら、酔っ払ったままでいいんじゃないの」と思いながらやってきた番組がここまで続くとは、誰も予想できなかったかもしれません。でも僕は、ものすごい地味なことを地味にやってきただけです。

 人と人が接する酒場という空間を癒しに感じる人は、いつでも必ずいます。酒場文化が廃れない以上、『酒場放浪記』も続きますよ。

写真=石川啓次/文藝春秋

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。