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「自分では普通の中学生だったと思いますけどねー。中2くらいからお酒を飲むようになり、酔っ払って万引きを繰り返してたら保護観察ついちゃって。母親ともうまくいかなくて、口喧嘩になると蹴りを入れたりしていました」

 吉村さんは中学時代から不良行為による補導などを繰り返し、就労支援をするNPO団体の保護下にあった。2022年のはじめ、「あなたの面倒を見られるのは中溝観光しかない」と中溝社長との面接がセッティングされた。

 

「面接に行ったらサングラスつけた怖い人が出てきました(笑)。しかも当時は母親がうつ病で働くのが難しくなっていて、下の兄弟の面倒も私が見る必要があったので日払いの仕事が希望だったのに、中溝観光開発は月払い。でも話しているうちになんか社長も仕事もおもしろいかもしれないから一緒に働きたいなと思って、入社したんです」

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 中溝社長は、吉村さんの採用を決めた理由をこう話す。

「愛華は小さい頃から実の父親に虐待を受けていたそうです。その後両親が離婚して母親に引き取られ、母親の再婚相手には懐いていたんですがその男性は後に自殺。不安定になった愛華は母親ともうまくいかなくなり、酒を飲んで万引きを繰り返す生活をしていました。でも面談してすぐに『この子は大人が真剣に話をすれば響く』と感じました。それで面倒を見ることを決めました」

「愛華が彼氏と別れるときに俺が呼ばれたりして」

 中溝観光開発で愛華さんが任された仕事は、会社のビルにテナントとして入るソープランドの部屋の清掃などだった。しかし将来について問われた愛華さんが「高卒認定の資格を取りたい」と中溝社長に話すと、社長は快諾し、就業時間に“仕事”として勉強をしているという。

中溝観光が管理するソープランドの空きテナントの一室

「愛華の勉強道具は、僕がプライベートなお金から支払いました。この子は育った家庭環境のせいか、自分の辛いことを顔にださず、笑って逃げようとするんです。でも辛い時は辛いと言ったほうがいいし、逃げずに頑張ることも大事。そう思えるような経験をここでさせてやりたいんですよ。ちょっと最近は、愛華が彼氏と別れるときに俺が呼ばれたりして、ボディガードかなんかだと勘違いされてる気もするけどね(笑)」