担任が連絡帳に記したアドバイスがきっかけで虐待
「その勉強のさせ方は以前からですか?」
日奈子「いや、4年生になってからです。ゴールデンウィーク明けです」
「ということは、それまでは脅さなくても宿題をしていたのですか?」
日奈子「いえ……。それまで宿題のことは気にしていませんでした」
「お母さんが気にしなくてはいけないような、何かきっかけがあったのですね」
娘の亜香里さん(仮名)が4年生に上がったゴールデンウィーク明けの連絡帳に、担任が記した母親へのアドバイスがありました。それを見た瞬間に、日奈子さんの胸は高鳴り、喉元が絞めつけられるような苦しい経験をしたということです。
<連絡帳> 亜香里さんは4月から宿題を1回も提出していません。ご家庭での指導をお願いいたします。
「では、3年生までは宿題をやっていたのでしょうか?」
日奈子「わかりません。担任の先生がゆるい方だったので、私が気づかなかっただけかもしれません」
「去年まではゆるい先生。では新しい担任は、宿題とかいろいろと、きっちり管理しているタイプということですか?」
日奈子「そうみたいです。クラスのお友達のお母さんも、給食が全部食べられなくて娘さん泣いてるって、言ってました……」
口で怒ってもきかなかったから…
「給食もなんですね。去年の先生は?」
日奈子「給食は、残しますって言えば、残してもよかったと思います」
「わかりました。それまでの先生はゆるいタイプだった。ところが大きく方針の違う先生に代わり、児童たちへの指導が厳しくなって、保護者にも家庭で指導してくださいと。宿題のことでそう言われたのがきっかけですね」
日奈子「ええ。それ見た瞬間、自分にスイッチが入っちゃったというか……」
「お母さんは元々自信に乏しいのかもしれません。母親としての自分が全否定されたように感じ、少しでも挽回しなくては、つまり宿題をやらせなくてはというスイッチが入ったようですね」
日奈子「そうです、そうです。せめて宿題だけは。口で怒ってもきかなかったから、台所から包丁持ってきたんです」
「そうしたら、効き目があった……」
日奈子「はい。毎日宿題をやって、出すようになりました」
「先生から何か言われましたか?」
日奈子「ええ。『家庭でのご指導のおかげで』って書いてありました」
「では先生は今(7月)、喜ばしいことが起きたと思っているのですか?」
日奈子「はい」
「しかし母親として悩んでいる」
日奈子「はい、その通りです」