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【1月のクリスマス】ロシアの支配を脱したウクライナ正教のクリスマス・ミサに沸くキーウの平和《不肖・宮嶋 ウクライナで神と遭う》

2023/02/02
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 不肖・宮嶋、半年ぶりにウクライナに戻って参りました。期せずして、我らが岸田文雄首相もヨーロッパを歴訪されるとのこと。折しも東方正教クリスマスの時、どうせ政府専用機でお越しになられるんやから、当地でロシア軍のインフラ攻撃のせいで、極寒の寒さに震えるウクライナの民に日本製の長持ちする使い捨てカイロでもクリスマスプレゼントとして大量に持参されるのをお勧めしときたい。

 それにせっかく欧州くんだりまでお越しになられるんやから、きっとウクライナの激戦地跡での首相視察もあることであろう。ついては不肖・宮嶋、還暦過ぎの老体に鞭打ち、謹んで露払い役でも買ってでようかと思っとったら、ウクライナには来んのかい!

「来ると思うてたのに来えへんのかい!」(吉本新喜劇の吉田裕風に。すみません、関西地方の方にしか分りませんが)聞けばフランス、イタリア、イギリス、カナダ、最後にアメリカに至るご日程やそうで、まあ派手な旅行好きなお方がお喜びになりそうなとこばっか。英才のほまれ高い秘書のご長男もご一緒でっか。自由に外国に飛んでいけるとウクライナ国民が聞けば、さぞや羨むことであろう。

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ウクライナ正教が正統な継承者となった記念すべき年に

 羽田からドイツのフランクフルトを経てポーランドの首都ワルシャワまで18時間。ホテルで荷を解く間もなく、早朝からワルシャワ中央駅発の長距離バスに揺られること10時間。空席が目立つ車内は意外にも温かく、昨年3月3日、ロシア軍の侵攻直後にウクライナに入ったときのような緊張感は感じられなかった。

街中の車の交通量も戻って来た 撮影・宮嶋茂樹

 しかし、リビウの街中はクリスマス目前の華やかさもかなり控え目であった。ウクライナ国民はプーチン大統領のコキだした36時間の停戦なんぞ全く信用しておらず、警戒を怠ることなく……というか、クリスマスにおねえちゃんと飯食ったり、大騒ぎするのは我が国ぐらいである。

 それにそもそも東方正教における生誕祭(クリスマス)は12月でなく、1月である。それに今年のクリスマスは特別である。ウクライナ正教は300年以上にもおよんだロシア正教支配の呪縛から解かれ、東方正教の正統な継承とされた記念すべき年である。

クリスマスを祝う人で活気のあふれる街 撮影・宮嶋茂樹

 しかし今ウクライナ全土は戦時下である。多くのウクライナ国民が避難を強いられ、戦時体制に身を置いとる。ロシア軍の攻撃で家族や友人を失った人も少なくない。あまつさえ侵略者どもは今なおドネツクに、クリミアに居座ったままである。めでたいことは何ひとつなく、そもそも騒ぎようがないのである。

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