2022年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった。日本メディアのほとんどが現地入りを躊躇していた3月5日、ポーランドから陸路でウクライナ入りした男がいる。数々のスクープ写真で知られる報道カメラマン、「不肖・宮嶋」こと宮嶋茂樹さん(61)だ。
宮嶋さんは3月12日、ロシア軍が13キロまで迫っていたキーウへ。以降4月17日に出国するまで、ブチャ、イルピンなど各地で取材を続ける。5月中旬には再びウクライナ入りし、東部ハルキウを取材。 激戦地で「戦争の真実」を目撃してきた。
ここでは、そんな宮嶋さんがウクライナの状況や激戦地の過酷さを記した『ウクライナ戦記 不肖・宮嶋 最後の戦場』(文藝春秋)から一部を抜粋。ウクライナ侵攻で激戦地となった首都キーウ郊外の街・イルピンで宮嶋さんが見た、戦争の凄まじい光景を紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)
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コロナ禍より戦禍
当たり前やが、ウクライナでは新コロ(編注:新型コロナウイルス)よりロシア軍のほうが圧倒的に脅威なのである。さらに当たり前のことやろうが侵略してきたロシア兵が新コロのワクチン打ってるわけもなかろう。
たとえ打ったにしてもプーチンすら打つのをためらったという「スプートニク」というなんちゃってワクチンであろう。侵略されるとはこういうことなのである。もう侵略するほうはなめになめまくっているのである。
このあたりもこの戦争に祖国防衛という大義があるウクライナ人に有利に働いたのであろう。もうなめまくって油断しまくりのロシアに対し、18歳から60歳までのすべての男は国内にとどまり侵略者と戦うよう国家総動員法が定められた。適用されない女性たちは早々に国外に避難できたはずなのに、それでも国にとどまる者たちもいる。
それは銃は撃てなくても事務ならできる、交換手ならできる、いや料理が得意なら最前線の将兵のために調理してそれを届けようと、自分たちでどうやって国に貢献できるか、どうやってこの理不尽な戦争に勝てるのかを皆が考えているからであろう。
そこらあたりが訓練だと思うていたらウクライナへの侵略戦争に加担していたと知ったロシア兵との士気のちがいであろう。侵略するロシアに対して、反撃するウクライナは敗ければ仕事も国土も財産も命すら奪われるのである。そりゃあ日々のコロナ禍なんぞ戦禍と比べたら咳がでた程度なのであろう。