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「今日も生きてたか?」と笑顔で話し、枕元には小銃を置く…ウクライナ軍のドローン部隊に従軍した不肖・宮嶋が伝える“ウクライナ侵攻の最前線”

『ウクライナ戦記 不肖・宮嶋 最後の戦場』より #2

2022/08/10

source : ノンフィクション出版

genre : ニュース, 社会, 国際

 2022年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった。日本メディアのほとんどが現地入りを躊躇していた3月5日、ポーランドから陸路でウクライナ入りした男がいる。数々のスクープ写真で知られる報道カメラマン、「不肖・宮嶋」こと宮嶋茂樹さん(61)だ。

 宮嶋さんは3月12日、ロシア軍が13キロまで迫っていたキーウへ。以降4月17日に出国するまで、ブチャ、イルピンなど各地で取材を続ける。5月中旬には再びウクライナ入りし、東部ハルキウを取材。 激戦地で「戦争の真実」を目撃してきた。

 ここでは、そんな宮嶋さんがウクライナの状況や激戦地の過酷さを記した『ウクライナ戦記 不肖・宮嶋 最後の戦場』(文藝春秋)から一部を抜粋。宮嶋さんが従軍したウクライナ軍・ドローン部隊の“実態”を紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く

東側のロシア国境近くでは森林の中に身を隠し、ドローンカメラが撮影する映像を見ながら、敵の探索や射撃誘導を行う 撮影・宮嶋茂樹

◆◆◆

ドローンが戦いの雌雄を決する

 ロシア軍の侵攻に対するウクライナ軍の反撃において、目となったのがまさにドローンであり、その支援を得たジャベリンミサイルの攻撃により、ロシア軍戦車はことごとく大破されていった。まさに「ドローン戦争」ともいえるぐらい、ドローン戦略の優劣が戦いの雌雄を決するという、これまでの地上戦の常識をごろっと覆すことになったのである。

 そんなドローン部隊への従軍取材のため、不肖・宮嶋はここハルキウで待機し続けていたのである。

 しかし今は戦時中である。そうこっちの都合よく取材が運ぶわけもない。ウクライナの民にとってはまさに生きるか死ぬか、勝って祖国を侵略者から取り戻すか、再び家族や友人を殺し、財産を、仕事を奪ったロシア人の顔色をうかがうだけの毎日にもどるか、そんな緊張の日々に日本人カメラマンの取材なんぞ、まさに鴻毛(こうもう)のごとしである。

 しかし帰国を1週間後に控えた5月末、今夕出発するという知らせをもたらしたのは、2カ月前イルピン取材をともにしたウクライナのドキュメンタリスト集団のデニスであった。

 ハルキウ市某所の町中あまたある、ロシア軍の攻撃で廃虚となった建造物前で待ち合わせた、前線までの案内人はドローン部隊のパイロット(オペレーター)のスラバと名乗った。

 スラバ、ロシア語、ウクライナ語でも「栄光」の意であり、男性の名でも人気である。自己紹介ののち早速前線宿舎に向かう。車は特に何の特別な防弾装備もないニッサンのRV車、すぐに発進……と思ったが、助手席のデニスが思い出したように振り返った。